研究実績の概要 |
救命救急センターに入室3日以内に1チャンネル脳波を記録した結果では,6名中3名の脳波解析が専門家の判読でも困難で,急性期を過ぎた回復期の患者に対象をシフトし,解析を進めることにした。 対象症例は16名で,年齢の中央値は64(48-78)歳,男女比11:5であった。診断については,外傷6,感染症3,大動脈解離3,偶発性低体温症2,その他2人であった。脳波記録日の血清CRPとRichards-Campbell睡眠質問票の総点は,7.1(3.3-13.0)mg/dl,340(260-410)であった。健常者のポリソムノグラフィ(PSG)のREM睡眠の減少が主観的睡眠評価と一致しているという報告からTSTのうちのREMの割合,すなわち%REMが10%未満か以上かで2群に分けて群間比較を行った。統計学的に有意差はないが,%REMが10%未満は血清CRP値が高く,Richards-Campbell睡眠質問票の総点が低い傾向にあった。 急性傷病から回復期にある患者で,睡眠脳波を解析した。総睡眠時間に対するREMの割合が低い患者では,血清CRP値が高い傾向にあることから全身炎症がREM睡眠を抑制していることが考えられた。または全身炎症がNREM睡眠を促進した結果,相対的にREM睡眠が減少したとも考えられた。今回は,これらの患者のせん妄発症率,ICU退室後の転帰について調査していないが,今後,症例を蓄積し,これらの結果についても評価する必要があると考えられた。また,PSGの結果とRichards-Campbell睡眠質問票の点数についてよい相関が得られたとの報告があるが,今回の標本では特に有意な相関関係はなかった。
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