研究課題/領域番号 |
15K10990
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾 健治 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60254489)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | VWF / ADAMTS13 / 虚血再灌流傷害 |
研究実績の概要 |
①肝虚血再灌流実験法の確立:ワイルドタイプマウスを用い、中・左肝動脈および同領域を灌流する肝門部の血管束をクリッピングにて閉塞し、肝表面の血流速が閉塞前の20%以下になるのを確認し、90分後に閉塞を解除して再灌流させ、24時間後に血流速および組織を観察するという方法を確立した。 ②当初はADAMTS13ノックアウトとワイルドタイプにて比較検討したが、はっきりとした差は認めなかったので、VWFノックアウトとワイルドタイプの比較を行ったところ、ワイルドタイプの方が肝傷害が強く、組織にては白血球の浸潤がより強く認められ、肝臓の虚血再灌流傷害はVWF依存性の炎症がその病態生理にかかわっていることが判明した。また、この炎症はリコンビナントのADAMTS13の静注によりVWFノックアウト程度の傷害に改善し、ADAMTS13が肝臓の虚血再灌流傷害の予防薬、すなわち肝移植時の肝傷害の予防薬になる可能性が示唆された。 ③肝の虚血再灌流傷害の研究と同様に腎臓の虚血再灌流傷害の観察についても研究方法を確立した。 ④同様に腎の虚血再灌流傷害をADAMTS13ノックアウトとワイルドタイプにて比較検討したが、はっきりとした差は認めなかったので、VWFノックアウトとワイルドタイプの比較を行ったところ、ワイルドタイプの方に腎傷害が強いことを認めた。現在のその傷害の差を組織学的に検討している。H&E染色においては、ワイルドタイプに微小血栓を多く認め、血小板やVWFの抗体を用い、免疫染色を行い血栓の構成成分を検索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①肝臓および腎臓ともに、一定の虚血再灌流傷害を呈する条件を決定するのに、時間を要した。 ②当初ADAMTS13ノックアウトマウスの虚血再灌流傷害がワイルドタイプよりも強いものと予測し、両群比較を行っていたがが、ある程度ADAMTS13ノックアウトに強い傷害を認めることもあったが、繰り返しても確信を持てるような一定の結果が得られず、実験を繰り返さざるを得なかった。そこで、同様の比較をVWFノックアウトとワイルドタイプにて行わざるを得ず、さらに実験を繰り返す必要があり、予定より時間を要することとなった。 ③腎臓の虚血再灌流傷害はVWFノックアウトよりワイルドタイプに強く認めたが、両者の組織の比較をしても歴然とした差を認めなかったため、この点においても実験を繰り返し行う必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
①今まで研究進捗状況に後れを認めた原因はほぼ克服できていると考えられるため、今後、腎臓の虚血再灌流傷害がVWFノックアウトよりワイルドタイプに強く認めた原因を免疫染色などにより明確化し、その組織学的差がADAMTS13の注入により減少するか、検討していきたい。つまり腎臓の虚血再灌流傷害の予防薬としてADAMTS13が使用可能か検討していきたい。 ②今後薬剤性の肝障害などに対するADAMTS13の効果などの研究も進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
冷蔵庫を本年度に発注して購入する予定だったが、業者の手違いにより実際に納入された冷蔵庫は注文したものと異なっており、注文した冷蔵庫は在庫がないことが判明した。 そこで本年度内に納入することは困難となったため、購入が次年度となってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の4月には冷蔵庫は納入され、次年度への繰越金は4月に使用された。
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