研究課題/領域番号 |
15K10993
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 和幸 昭和大学, 医学部, 助教 (80555087)
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研究分担者 |
大滝 博和 昭和大学, 医学部, 講師 (20349062)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱射病 / 遅発性中枢神経障害 / 巧緻運動障害 / 協調運動障害 / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
熱射病後, 体内では自然免疫炎症反応(炎症反応), 神経内分泌・自律神経反応(抗炎症反応), 凝固線溶反応が起こる。申請者は2010年から熱射病モデルの作成をおこない, 遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)投与が熱射病後3週間の運動機能(Rotarod)を有意に改善することを発見した。 上記機序を解明するために、生理食塩水群・rTM投与群(熱射病後からrTm 6mg/kg,ip+is 5日間連続)投与した2群にわけて熱射病後1週間・3週間に動物を犠牲にし脳・血清を摘出した。摘出した脳はすぐに、大脳皮質・脳幹・小脳に顕微鏡下分離し凍結した。凍結した標本を用いてサンプルを作成し、ELISAを用いてTNF-α, IL-6, IL-10, IL-1βの測定をおこなった。対照群としては暑熱暴露をおこなっていない動物の脳・血清を用いた。結果、rTM群は熱射病後1週間の脳幹で生理食塩水投与群と比較して有意にTNF-αを抑制した。小脳・大脳皮質でも低下傾向であったがあきらかな有意差は認めなかった。 一方、IL-6, 10では2群で有意な差は認めなかった。IL-1βについては測定感度以下のために測定できなかった。このため今後は、PCRにより熱射病後の変化について検討する予定である。 また、一般に報告されている血清のサイトカインでは暑熱暴露後、数時間で上昇を認め24時間では低下を認めている。ただ、中枢神経では熱射病後1週間でもTNFαが対照群に比べて高いレベルにあり、3週間後にようやく対照群と有意差がないレベルにまで低下した。このことから、暑熱暴露後、中枢神経の炎症性サイトカインは血清とは異なった動態を示す可能性が考えられた。 今後、より詳しく暑熱暴露6時間・24時間後について検討をおこない、中枢神経における詳細なサイトカインの動態について検討をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱射病後, 体内では自然免疫炎症反応(炎症反応), 神経内分泌・自律神経反応(抗炎症反応), 凝固線溶反応が起こる。申請者は2010年から熱射病モデルの作成をおこない, 遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)投与が熱射病後3週間の運動機能(Rotarod)を有意に改善することを発見した。 上記機序を解明するために、生理食塩水群・rTM投与群(熱射病後から6mg/kg,ip+is 5日連続)投与した2群にわけて熱射病後1週間・3週間に動物を犠牲にし脳・血清を摘出した。摘出した脳はすぐに、大脳皮質・脳幹・小脳に顕微鏡下分離し凍結した。凍結した標本を用いてサンプルを作成し、ELISAを用いてTNF-α, IL-6, IL-10, IL-1βの測定をおこなった。対照群としては暑熱暴露をおこなっていない動物を対照群とした。結果、rTM群は熱射病後1週間の脳幹で有意にTNF-αを抑制した。小脳・大脳皮質でも低下傾向であったがあきらかな有意差は認めなかった。一方、IL-6, 10では2群で有意な差は認めなかった。IL-1βについては測定感度以下のために測定できなかった。このため今後は、PCRにより熱射病後の変化について検討する予定である。 また、一般に報告されている血清のサイトカインでは暑熱暴露後、数時間で上昇を認め24時間では低下を認めている。ただ、中枢神経では熱射病後1週間でもTNFαが対照群に比べて高いレベルにあり、3週間後にようやく対照群と有意差がないレベルにまで低下した。このことから、暑熱暴露後、中枢神経のサイトカインは血清とはことなった動態を示す可能性が考えられた。今後、より詳しく6時間・24時間後について検討をおこない、詳細なサイトカインの動態について検討をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で、遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)が熱射病後の中枢神経の炎症性サイトカインを抑制していることが判明した。 今年度は、熱射病後中枢神経障害の機序について解明をおこなうため、病理組織学的な評価をおこなう。 まず、熱射病後24時間・1週間・3週間・7週間に動物を犠牲にし、脳組織を摘出する。摘出した脳を用いて、凍結切片(5μm)を作成する。細胞の形態を観察するためにHE染色、神経細胞死を検索するためにFluoro Jade B(FJB)染色、髄鞘を評価するために Kluver-Barrera(KB)染色染色をおこない、形態的に中枢神経のどの部位が、いつから傷害されているかについて検討し、熱射病後中枢神経傷害の自然経過について検索をおこなう。対照群として暑熱暴露を負荷していない動物を用いて同様の手順で脳を摘出し標本を作製し観察する。さらに、評価をより明確にするために免疫染色(AQP4・GFAP)をおこない、傷害範囲をより定量化し観察をおこなう。また、実臨床で中枢神経傷害がどのようにMRI画像で描出されるかを検討する。このため、犠牲にする前にマウスの頭部MRI検査を施行し、病理組織学的所見とMRI画像所見との対比をおこなう。これは、実臨床でその効果を客観的に評価することにつながると考える。 自然経過をはっきりさせた後に、生理食塩水投与群とrTM投与群の2群で比較をおこない、熱射病後24時間・1週間・3週間・7週間にrTMが熱射病後の神経傷害に及ぼす影響について比較検討する。この際、免疫染色を用いて定量的に範囲を比較する。併せて、上述と同様に頭部MRIを施行し、実際の臨床でrTMのヒト熱射病症例への効果が客観的に判定でき臨床研究につながることを目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は組織(中枢神経:大脳皮質・小脳・脳幹)のサイトカインを測定するためにELISAをおこなった。購入を考えていたELISA kitを比較的安価に購入できたこと、また、インターロイキン1βについても測定予定であったが、検体が感度以下のために測定することができなかった。次年度に改めてPCRで測定する予定である。 また、旅費については米国集中治療医学会で成果を発表したが、今回は私費から捻出したために今年度に旅費は計上しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、昨年度に実施できなかったIL-1βのPCRを施行予定である。また、昨年度の予算で今年度に予定している染色液・免疫染色に必要な抗体の購入を検討していている。
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