研究実績の概要 |
最重型の熱中症(熱射病)は病態が全身性炎症反応症候群(SIRS)から高サイトカイン血症, Bacterial translocationを引きおこし, 臓器傷害・播種性血管内凝固へ進展することが知られている。しかし、熱中症の詳しい病態については未だにわかっていない点が多く、このため早期の全身冷却以外に確立された治療法がないのが現実である。日本で開発された遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)は播種性血管内凝固症候群の治療として広く臨床で用いられその有用性が認められている。 熱中症は全身に炎症が惹起されることから、前年度は、血漿中、組織(大脳皮質・脳幹・小脳・肝臓・腎臓・小腸)の炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6, IL-1β, HMGB1)、抗炎症サイトカイン(IL-10)をElisaを用いて測定し、大脳皮質・小脳において有意にrTMが炎症性サイトカインを低下させることを確認した。しかし、IL-1β, HMGB1などのサイトカインはElisaでは濃度が低く検出できなかった。このため、今年度は炎症性サイトカイン(IL-1β, HMGB1)、酸化ストレスマーカー(iNOS)マーカーの発現をReal time PCRで定量する予定である。熱中症後24時間・1週間のモデルを作成し、すでにRNA抽出からcDNAの作成まではすべて終わっている。Real time PCR装置の不具合も改善したため、来年度に順次測定をおこなう。 また、組織にについてはHE標本、KB染色(脱髄を観察する染色方法)で確認をおこなったが、いずれも光学顕微鏡上ではあきらかな有意差は認められなかった。このため、残ったブロックから新たに切片を切り出して免疫染色(GFAP, NeuN, Iba1, CD31)をおこない評価をおこなっていく予定である。
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