研究実績の概要 |
侵襲下に生じる血管透過性亢進のメカニズムとその調整機構を検討するために、C57BL/6マウスを用いて、中等度の盲腸結紮穿孔モデル(CLP)を作成した。本モデル上で、36時間までの水分布状況(細胞外水分量・率等)を生体バイオインピーダンス法(BIA法)を用いて測定した。さらに血管透過性亢進を生じる一因である血管内皮細胞間の接着装置の障害程度を評価するために、血中可溶性VE-カドヘリン(s-VE-カドヘリン)を測定し、BIA法測定結果との関係を検討した。次に、血管内皮細胞間の接着装置に対する正の調整因子であるAngiopoietin-1を同モデルに投与し、BIA法測定値の変化、生体内の水分布状況の変化を確認した。 本モデルにおいては、24~36時間の間に、経時的に侵襲度に応じて、細胞外液量(ECW)は前値(0h値)の約110%まで増加した。この過程でs-VE-カドヘリンは経時的に増加し、ECW%変化率(36h/0h ECW%)と正の相関を示し、血中Angiopoietin-1とは負の相関を示した。Angiopoietin-1はその時点の血小板数と相関したことから、血管透過性亢進と血小板機能との関係が強く伺われた。そこで同種マウスから得た血小板から、富血小板血漿、さらに濃厚Angiopoietin-1液を作成し、CLPマウスに投与し、血小板の血管透過性亢進に対する調整効果を検討した。CLPマウス後0,12,24hにAngiopoietin-1濃厚液を投与することにで、BIA上のキャパシタンス、レジスタンスの低下の抑制と、細胞外水分量の増加が抑制された。 侵襲下に生じる血管透過性亢進は、血小板によって強く制御されており、血小板をmodulateすることで、制御困難な侵襲下の血管透過性亢進を調整できる可能性が考えられた。
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