本研究では、破骨細胞分化が抑制された遺伝子欠損マウスのうち、歯の萌出が起こらないc-fos欠損マウスと、歯の萌出が起こるDAP12遺伝子欠損マウスとDAP12/FcRrの二重遺伝子欠損マウスを用いて、萌出過程にある歯の周囲組織の遺伝子発現を網羅的に解析し、代償性に破骨細胞分化に関与する分子の同定を目的とした。 当該年度は、上記の3系統のマウスと野生型マウスの下顎臼歯部について組織学的検討を行った。生後2週齢の野生型マウスとc-fos欠損マウス、DAP12遺伝子欠損マウスの臼歯部下顎を摘出し、固定後に脱灰して、パラフィン切片を作製した。切片にヘマトキシリン・エオジン(H-E)染色と酒石酸耐性ホスファターゼ(TRAP)染色を施し、歯槽骨や歯根膜、臼歯の形成について比較検討した。その結果、c-fos欠損マウス歯槽骨は大理石骨病様を呈し、歯根膜は薄かったが、DAP12遺伝子欠損マウスの歯槽骨に異常は見られず、歯根膜も野生型マウスと同様、正常であった。 また当該年度は、生後12週齢と生後4週齢のDAP12/FcRr遺伝子欠損マウスの下顎をマイクロCT撮影し、得られた画像データの比較検討を行った。生後4週齢よりも生後12週齢で骨量は増加していた。また、生後12週齢のDAP12/FcRr遺伝子欠損マウスと野生型マウスのマイクロCT画像を比較検討したところ、DAP12/FcRr遺伝子欠損マウスは野生型マウスと比較して、骨量の増加が認められた。以上のことから、生後1ヶ月以内では骨に異常はみられないが、生後3ヶ月経つと骨量が増加し、大理石骨病様になる可能性が示唆された。今後、生後12週齢の骨を組織学的に検討する必要があると考える。
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