研究実績の概要 |
唇顎口蓋裂は、日本では500人に一人の割合でみられ、先天異常の中で最も高い確率で起きる以上の一つである。また、唇顎口蓋裂や下顎などの顎顔面領域の形態異常は、症候群の一症状としても認められる。申請者は「顎顔面領域の形態異常にいたる分子病態メカニズムの解明」を最終目的とし、分子発生学的手法を用いて転写制御機構を解析している 。本研究計画では、口蓋裂の病因、口蓋の発生、顎顔面・頭蓋骨の発生において、T-box型転写因子Tbx1、および、bHLH型転写因子Hand1とHand2がはたす役割を解析している。 申請者は、Hand2が下顎の初期発生に必要な遺伝子群の発現に対しては正の調節を、口蓋の初期発生に必要な遺伝子群の発現に対しては負の調節を行い、この形質転換にホメオボックス型転写因子群の発現変化を伴うことを明らかにした(Funato et al, Sci Rep, 2016;Funato et al, Genom Data, 2016)。また、Tbx1遺伝子改変マウスの口蓋裂の病因に関わる遺伝子、下顎の発生に必須の遺伝子について網羅的発現解析を行い、 解析結果を遺伝子発現情報データベースNCBI GEO(Gene Expression Omnibus) を通じて公開している (GSE75805, GSE79514)。 一方、これまで報告されているノックアウトマウスの口蓋裂について全てまとめて総説することで、マウスの口蓋裂と遺伝子について理解を助ける上でも一定の役割を果たした (Funato et al, World J Biol Chem, 2015)。また、ヒトの口蓋裂の表現型に対して疾患遺伝子を融合させることで、口蓋裂の疫学を遺伝子統計解析から裏付けした (Funato et al, Int J Oral Sci, 2017)。
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