唇顎口蓋裂は、出産1000人中1~3人の割合でみられると言われ、先天異常の中で最も多い確率で起きる症状の一つである。また、唇顎口蓋裂や下顎の形態異常などの形態異常は、症候群の一症状としても認められる。申請者は、顎頭蓋顔面の発生機構に関わる転写因子を分子生物学および発生生物学の両面から解明することで、顎頭蓋顔面骨の形態異常や口蓋裂の治療に研究を展開するのが目標としている。そこで、本研究課題では、「口蓋の初期発生に関わる転写制御ネットワーク」を解明するために、 T-box型転写因子Tbxl 、 bHLH型転写因子Hand2およびHandlなどの転写因子の解析を行ってきた。その結果、口蓋裂の病因、口蓋の発生、顎顔面の形態形成について研究成果が得られた。例えば、遺伝子改変マウスについて、口蓋裂に関わる遺伝子群、また、口蓋(上顎)および下顎の初期発生に関わる遺伝子群について網羅的解析を行い、遺伝子情報データベースNCBI GEOを通じて公開した。 転写因子Hand2は、ホメオボックス型転写因子群の発現調節 を伴って上顎を下顎へ形質転換することを報告した。さらに、口蓋裂の病因について広く理解するために、これまで報告されてきた遺伝子改変マウスについて包括的に総説した。 最終年度は、ヒトの口蓋裂の疾患疫学や表現型に疾患遺伝子を融合させるため、口蓋裂の疾患遺伝子群に遺伝子オントロジー解析を適用し、報告した。また、 T-box型転写因子Tbxlが口蓋の発生で制御する遺伝子群について報告した。
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