研究課題/領域番号 |
15K11005
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
柴田 俊一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80187400)
|
研究分担者 |
田巻 玉器 北海道大学, 歯学研究科, 専門研究員 (50397709) [辞退]
依田 浩子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60293213)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ヒアルロン酸合成酵素 / ヒアルロン酸 / 歯胚 / in situ hybridization |
研究実績の概要 |
2016年度は前年度までの結果を大学院生の学位論文としてまとめて雑誌に発表した(Morita T et al. Gene Expression Patterns 21:28-40, 2016). 内容はリアルタイムPCRの解析により、HA synthase (Has)1 mRNAは歯胚形成過程ではほとんど発現が認められず、Has2 mRNAは歯乳頭や歯胚周囲の間葉組織、Has3 mRNAはエナメル器の他歯根形成を制御するヘルトビッヒの上皮鞘 (HERS )内、あるいは近年stem cell nicheとして認識されている切歯の apical bud 内の transit zone に発現が認められた。また歯冠部の乳頭層にもHas3の発現が認められた。HA-binding proteinを用いた組織化学的検索により、HAは上皮、間葉両者やHERS, Apical bud等様々な部位に存在する事が分かった。以上のことからHas3分子のうち特にHas3が歯胚発育、特に生後における歯根形成や apical bud の構造維持、さらに乳頭層でのミネラルの輸送等の機能に関係している可能性が明らかとなった。さらに本年度はこれらの Has3 の機能を確認するために、胎齢16日のマウス歯胚を摘出し器官培養の系に移し、Has3に対するsiRNAを培地に添加しこの分子の歯胚発育に対する影響を検索した。その結果Has3 mRNAの発現は約50%低下し実験系が有効に機能している事がわかった。しかしながら歯胚の発育に関する顕著な形態異常は認められなかった。この事は他のHas分子(Has1, Has2)が代償的に働いている可能性もあり、更なる検討が必要な状況となっている。さらに器官培養の培地に2mMのβ-グリセロリン酸を添加する事で迅速に石灰化組織を誘導する系も確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯胚発育におけるHas遺伝子の発現パターンを検索する事で、特にHas3の重要性が明らかとなった。この結果は大学院生の学位論文として発表する事が出来た。また歯胚の器官培養の系にsiRNAを添加する実験系で、Has3の発現低下を誘導することが出来た。ヒアルロン酸およびその合成酵素であるHas3の歯胚形成に関する生化学的、分子生物学的意義についてはまだ明らかになっていないが、Has1やHas2の遺伝子発現を同時に低下させる等の実験でそれらを明らかにできる可能性がある。また器官培養の系で石灰化組織を迅速に石灰化させる系を確立した。以上のことから実験計画は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は器官培養の系にヒアルロン酸(HA)合成阻害薬4-メチルウンベリフェロン(MU)の添加実験、あるいはHas 1,2,3に対するsiRNAを同時に培地に添加する実験等でHA合成を阻害し、ヒアルロン酸の歯胚形成に関する機能をさらに明らかにする予定となっている。また歯胚全体あるいは上皮と間葉を分離ちたのち3H-グルコサミンを培地に添加する事でmetabolic labeling を行い合成されたHA量を定量するとともに、合成されるHAの構造解析を行う予定である。さらに培地に基質であるβ-グリセロリン酸を添加する事により、石灰化組織を迅速に誘導する系が確立しており石灰化に伴うHA合成の影響も検索する予定となっている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
運営費交付金等別予算で当初購入予定の試薬、器具が購入できたため、その分予算に余裕ができたことと論文掲載費が想定よりかからなかった事で次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
ラジオアイソトープやオートラジオグラフィー用乳剤等高価だが必須な試薬を積極的に購入し、それらを用いた実験を進める予定となっている。また論文掲載費として使用し、論文作成数を増加させる計画を立てている。
|