研究課題/領域番号 |
15K11010
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
樋山 伸二 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (60314754)
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研究分担者 |
吉子 裕二 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (20263709)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨代謝 / エストロゲン / 骨髄骨 |
研究実績の概要 |
骨代謝、特に破骨細胞の機能制御に関わるエストロゲンに特異的に応答する遺伝子を見出し、その調節機構を解明するため、昨年度に引き続き、エストロゲン(E2)を単回投与した雄ウズラの骨髄骨形成モデルを用いて、以下の実験を行なった。 1.ウズラ骨髄骨の破骨細胞におけるエストロゲン応答遺伝子の同定を行なうため、E2投与3日後の骨髄細胞を採取し、RANKL/M-CSFにより破骨細胞に分化させた。また、RANKL/M-CSFと同時、培養中期、ならびに培養終了直前に17β-エストラジオール(17β-E)を添加した。この過程において、17β-Eにより、E-カドヘリン、Ephrinとその受容体Eph、TIAM2などの遺伝子の変動が認められた。DNAマイクロアレイ解析から、さらにいくつかの遺伝子をエストロゲン応答遺伝子の候補とした。 2.破骨細胞の分化過程におけるエストロゲン応答遺伝子の候補遺伝子の発現を検討したところ、17β-Eにより発現量が大きく変動したもの、タンパク質の発現に増減を示したものが確認された。さらに、それらの変動は17β-Eの添加時期によって異なっていた。 3.エストロゲン応答遺伝子の候補が見出されたことから、哺乳動物の破骨細胞におけるこれらの遺伝子の解析を速やかに行なうため、マウス骨髄細胞を用いた破骨細胞の培養方法の確立に着手した。 以上の結果から、骨髄骨の破骨細胞において、さらにエストロゲン応答遺伝子の候補がいくつか見出された。これらの遺伝子には、哺乳動物の破骨細胞で発現が認められているものもあるが、エストロゲンとの関係は未だ報告がなされていないものもある。したがって、骨髄骨の破骨細胞で見出されたエストロゲン応答遺伝子の解析は、哺乳動物の破骨細胞のみならず骨代謝の研究にたいへん有意義な結果をもたらすと考えらえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度のおける研究計画では、鳥類骨髄骨の破骨細胞を用いたDNAマイクロアレイ解析で得られた結果から、エストロゲン応答遺伝子を同定することとしていた。鳥類骨髄骨の破骨細胞の分化過程において、これらの候補遺伝子の中からエストロゲンにより発現が変動する遺伝子(エストロゲン応答遺伝子)が見出された。当初は、マウスの骨髄細胞を用いた破骨細胞の培養方法の確立を先行したが、難航しているため、さらに骨髄骨におけるエストロゲン応答遺伝子の候補を見出し、エストロゲンによる発現への影響を検討した。また、エストロゲン応答遺伝子の培養細胞での発現のみならず、骨髄骨のリモデリングにおける発現を調べるために、エストロゲン応答タンパク質の抗体を作成した。現在、ウェスタンブロット法や免疫組織学により、そのタンパク質の発現を検討している。鳥類骨髄骨の破骨細胞におけるエストロゲン応答遺伝子の役割をより詳細に検討するともに、哺乳動物の破骨細胞におけるそれらの遺伝子の発現を検討する必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成28年度で得られたエストロゲン応答遺伝子の候補遺伝子の骨髄骨破骨細胞への役割をさらに解析するために、これらの遺伝子の発現をRNAiにより抑制、あるいは翻訳されるタンパク質の中和抗体や阻害剤を用いて、破骨細胞の分化、機能およびアポトーシスに及ぼす影響を検討する。 2. 骨髄骨リモデリングにおけるエストロゲン応答遺伝子の発現をウェスタンブロット法や免疫組織学的に検出する。 3. DNAマイクロアレイ解析で得た候補遺伝子の中から、エストロゲン応答遺伝子の同定を継続する。 4. マウス骨髄細胞から破骨細胞を分化させるとともに、分化過程や骨吸収時におけるエストロゲン応答遺伝子とタンパク質の発現をRT-PCR法やウェスタンブロット法などにより検出する。 5. マウス骨髄細胞を用いて、エストロゲン応答遺伝子の発現をRNAiにより抑制、またはタンパク質を中和抗体や阻害剤で阻害し、破骨細胞の骨吸収能およびアポトーシスに及ぼす影響を調べる。さらに、応答遺伝子をアデノウイルスベクターにより過剰発現させ、破骨細胞への影響を同様に検討する。
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