研究課題/領域番号 |
15K11011
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 幾江 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (00346503)
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研究分担者 |
菅井 基行 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10201568)
小林 純也 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (30301302)
小原 勝 広島大学, 大学病院, 助教 (80253095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ペプチドグリカン / アセチル化酵素 |
研究実績の概要 |
口腔レンサ球菌(S. mutans, S.sobrinus, S.salivalius, S.sanguinis, S.mitis)の細胞壁ペプチドグリカンの構造を解析した結果、いずれの菌種も修飾率は異なるがグリカン鎖のMurNAcアセチル体が存在していた。その中で、S.sobrinusのみ架橋ペプチド鎖(Thr-Ala)のアミノ酸・Thrがアセチル修飾されたアセチル体を含んでいた。一方、S.salivalius H665の架橋ペプチド鎖(Thr-Gly)のThrはアセチル修飾を受けていないがS.cricetus及びS.downeiの架橋ペプチド鎖(The-Ala)のThrはS.sobrinus同様、2か所、2種類のアセチル修飾体が存在していた。 S.sobrinusには、2種類のペプチドグリカン‐アセチル化酵素が存在すると推測されたため、Staphylococcal OatA protein (SAV2567)をqueryとして、口腔レンサ球菌のゲノム情報をバイオインフォマティクス解析し、アセチル化遺伝子を探索した。 得られたアセチル化酵素の数は、S.sobrinus, S.criceti, S.downeiは2個、他の口腔レンサ球菌は1個であった。ペプチドグリカンのアセチル化酵素は、N末端側に11個の膜貫通ドメインを有し、C末端側にSer-Asp-Hisを活性部位とするアセチル化酵素であった。S.sobrinus,S.cricetusおよび S.downeiにのみ見出された2種類のアセチル化遺伝子は系統樹解析から別種のグループに識別されたことから、グリカン鎖のMurNAcをアセチル化するアセチル化酵素と架橋ペプチドのThrをアセチル化するアセチル化酵素の責任遺伝子が特定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔レンサ球菌(S. mutans, S.sobrinus, S.salivalius, S.sanguinis, S.mitis, S.cricetus及びS.downei)の細胞壁ペプチドグリカンのアセチル化修飾構造を解析した結果、従来見出されていない修飾体が特定の菌種に見出され、特定の修飾体を有する菌種は、う蝕等において臨床細菌上重要な知見を提供する可能性が示唆された。 口腔レンサ球菌のゲノム情報をバイオインフォマティクス解析 (BLASTP program, TreeGraph 2, PRALINE algorithm, HMMTOP, in silico molecular cloning software等) し、アセチル化遺伝子を探索した。得られたアセチル化遺伝子について構造情報を膜貫通ドメイン、catalytic domain、立体構造などから解析し、いずれもアセチル化酵素遺伝子と特定できた。系統樹解析から、Thrをアセチル化するアセチル化遺伝子を特定できた。 本研究は、特異的にう蝕原因菌を選択的に除去・検出する手法を志向している。そのための予備実験(例えば、抗体を用いてS.sobrinusを口腔常在菌叢から選択的に認識し除去できるか?という実験)を別途平行して行ったので、当初の予定から少しずれたが最終目標へのアプローチとしては変わっていない。
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今後の研究の推進方策 |
ペプチドグリカン‐アセチル化酵素のin vitro活性評価系の構築を2種のアセチル化酵素について、組み換えタンパク質を作成し基質特異性を評価する。S.sobrinusに特異的に発現しているアセチル化酵素の機能をアセチル化酵素の変異株を作成し、酵素の機能を確認する。 S.sobrinusの形質転換を可能とするプラスミドの構築を試みる。E.coli-Streptococcus shuttle plasmid vectorであるpVA838やpDL289を用いてS.sobrinusの形質転換を可能とするプラスミドを構築する。S.sobrinusの形質転換が困難な場合、ペプチドグリカンの構造が類似しているS.cricetiまたは S.downeiを用いて形質転換を試みる。 アセチル化酵素の変異株を作成し、ペプチドグリカンのアセチル化部位及びその割合をRP-HPLC及び質量分析を用いて解析し、同じアセチル化酵素であっても、各々個別の基質に独立して作用しているか働きを確認する。 アセチル化酵素の変異株を用いた細胞内における機能解析として野生株及び2種類のアセチル酵素変異株、過剰発現株を用いて、細胞壁合成や分解における酵素の役割を検討する。内在性autolysinとの関連を濁度の減少を指標に溶菌を評価する。さらに変異株を封入したSDS-PAGE,zymogram実験をcell lysateを用いて行いautolysinに対する作用を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬がキャンペーン中で多少安価になったため
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次年度使用額の使用計画 |
本年度試薬購入費にあてる
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