研究課題/領域番号 |
15K11011
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 幾江 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (00346503)
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研究分担者 |
菅井 基行 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10201568)
小林 純也 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (30301302)
小原 勝 広島大学, 病院(歯), 助教 (80253095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | う蝕 / ミュータンス |
研究実績の概要 |
口腔常在菌中、streptococcus mutans(ミュータンス菌)とS.sobrinus(ソブライナス菌)は,う蝕原因菌として知られている。う蝕は多くの国民が原因菌に罹患している細菌感染症の一つであるが、Lactobacillus属が根面う蝕に関連するとか、多くの口腔常在菌がmutans streptococciの歯面付着に関与する、など複雑な因子が絡み合って生じるとされ依然として効果的予防法は開発されていない。抗原抗体反応やbinding domainの結合特異性を利用することにより、口腔常在菌叢をかく乱することなく、う蝕原因細菌を選択的に除去・検出できる手法を志向し研究に着手した。 う蝕原因菌に特異的に発現しているタンパク質を利用し、う蝕原因菌を選択的に除去する方法の開発を試みるための基礎的な検討としてFACScanによるmutans streptococci迅速定量法の可能性を検討した。健常ボランティアより唾液を採取し検体とした。使用抗体はウサギ抗Streptococcus mutans抗体(一次抗体)を用いた。FITCラベル抗ウサギIgG二次抗体、もしくはFITCを直接ラベルした一次抗体を用いて抗原抗体反応を行い、FACScaliburで唾液中のoral floraを展開した。蛍光顕微鏡を用いて、oral flora中streptococciに対する反応率を検討したところ、ほぼ100%の反応を示したが、非特異性反応、並びに自己蛍光発色菌の存在の可能性も存在していた。また、う蝕原因菌が他の菌と共存した状態での検出の特異性等の評価のための基礎実験としてLactobacillus rhamnosusにおいてgreen fluorescein proteinを発現させ蛍光標識する実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
う蝕原因菌に特異的に発現しているタンパク質としてペプチドグリカン‐アセチル化酵素の責任遺伝子を特定しType I, Type II遺伝子の組み換えタンパク質を作成し、in vitroの活性評価系を構築し、基質特異性を評価する実験の準備が整った。 FACScanによるmutans streptococci迅速定量法の可能性を、市販品試薬、ウサギ抗Streptococcus mutans抗体(一次抗体)、FITCを標識した蛍光標識抗ウサギIgGニ次抗体を用いて検討した。う蝕原因菌に発現している特異的結合部位の領域を蛍光標識し、これを検出試薬として用いる実験を行い、検出試薬としての特異性を評価した。また、Lactobacillus rhamnosus にgreen fluorescein proteinを発現させ、う蝕原因菌が他の菌と共存した状態での検出の特異性評価のための材料を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
う蝕原因菌に特異的に発現しているタンパク質の組み換えタンパク質を作成し、in vitroの活性評価系を構築し、基質特異性を評価する。ペプチドグリカン‐アセチル化酵素の機能解析として(1)同定したペプチドグリカン‐アセチル化酵素の変異株、過剰発現株を作成し、phenotypeの解析から遺伝子とタンパク質の関係を明らかにする。(2)細胞壁合成や分解におけるペプチドグリカン‐アセチル化酵素の役割を内在性autolysinとの関係やcell cycleにおける発現と局在の関係から細胞内におけるペプチドグリカン‐アセチル化酵素の機能を解明する。(3)ペプチドグリカン‐アセチル化酵素がペプチドグリカンの硬さに与える影響をリゾチームや抗生物質感受性から評価する。 生物学的親和性を利用した、う蝕原因菌を選択的に除去または検出・単離する方法の検討を行う。具体的には組み換えタンパク質の抗体を作成し、flow cytometerや磁性ビーズを用いて主要な口腔レンサ球菌群からS.sobrinusを特異的に分離可能か検討し、う蝕予防を目的とした機能性玩具(おしゃぶり)や機能性食品(ガム)の実用化に向けての基盤を構築する。う蝕原因菌S.sobrinusの形質転換が困難な場合、S.sobrinusと類似したペプチドグリカンを有するS.criceti及びS.downeiの2菌種をS.sobrinusに代わる形質転換のhost cellとして選択し、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した試薬が海外発注品の試薬であり、納期にかかる期間が、当初の納期より大幅に遅れたため(詳細は不明であるが、受注してから試薬作成作業に取り組んだのか、品質 または量の供給に時間を要したと思われる)。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬を入手次第、実験に取り組む。
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