研究実績の概要 |
口腔常在連鎖球菌(S. mutans, S. sobrinus, S. salivarius, S. sanguinis, S. mitis, S. cricetus, 及びS. downei )の細胞壁構造に注目し、アセチル化修飾状態を検討した。結果、修飾率は異なるものの上記7菌種すべてのグルカン鎖にMurNAcアセチル体が存在した。また架橋ペプチド鎖が-Thr-Ala-のS.sobrinus, S. cricetus, S. downeiの3菌種にThrのアセチル修飾体が見いだされた。ゲノム情報バイオインフォマティック解析からS. sobrinusに2個のアセチル化酵素遺伝子候補を発見し、予測される一次構造からN末に11個の膜貫通ドメイン、C末に活性部位と思われるSer-Asp-His残基を有していることを明らかとした。本年度はこの遺伝子をS. sobrinusで組み換え体の作成を試みたが宿主制限系のためか欠損株等作成に至らなかった。 我々が単離したペプチドグリカン加水分解酵素”Aml”の細胞壁結合ドメインの13アミノ酸残基からなるリピート構造がう蝕原因菌のS. mutans, S. sobrinusの細胞壁にのみ結合することが確認されている。蛍光化Aml細胞壁結合ドメインを作成し、生菌に反応させた後フローサイトメトリー解析を行ったところ口腔連鎖球菌ではS. mutans, S. sobrinusに強く反応し、S. mitisに軽度反応する結果が得られた。またう蝕を持つボランティア唾液を用いたS. mutans, S. sobrinus迅速診断では唾液採取から約1時間で定量が可能であり、既存の臨床検査法より時間短縮の可能性が示唆された。フローサイトメトリーの応用として、唾液中の口腔常在菌に蛍光化Aml細胞壁結合ドメインを反応させフローサイトメトリーで蛍光陽性分画と陰性分画をセルソートより分離し、陰性分画を回収する手法により98%以上のう蝕原因除去が可能であることが明らかになった。
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