研究課題/領域番号 |
15K11012
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
長宗 秀明 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 教授 (40189163)
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研究分担者 |
友安 俊文 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 准教授 (20323404)
田端 厚之 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 講師 (10432767)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口腔連鎖球菌 / 細胞溶解毒素 / 溶血毒素 |
研究実績の概要 |
データバンクに登録された口腔連鎖球菌に属するミチス-肺炎球菌群(MGS)のS. oralis subsp. tigurinusゲノムにコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)の候補となるtly遺伝子が見出されたため,大腸菌でその組換え体を作製し,溶血活性を解析した。その結果,ヒト赤血球への結合性も溶血性も確認されなかった。この毒素候補タンパク質の細胞膜コレステロールとの接触残基と推定されるアミノ酸には,通常のCDCと異なる2残基の置換があり,これが溶血毒素活性を示さない原因であることが考えられた。 次に,これまでの解析から,S. mitis(SM)では,単数あるいは複数のCDC遺伝子をゲノムの特定の遺伝子座に持つ病原性の高い菌株群とCDC遺伝子を全く持たない菌株群が菌種内に存在することから,同一菌種あるいは菌群の株間でCDC遺伝子の伝搬が起こり,病原性の異なる株が生じている可能性が示唆されていた。そこでCDC保有パターンが異なるSM高病原性株にスペクチノマイシン(SPCM)耐性を,またCDCなどの溶血毒素(HL)を全く持たないSM基準株にクロラムフェニコール(CP)耐性を導入し,CDC保有株とHL非保有株の組み合わせで共培養して,ヒト血液寒天上でβ溶血性を示すCR耐性かつSPCM感受性のSM株の分離を試みた。しかし通常の共培養では該当株は得られず,1.生育状態の異なるCDC保有株とHL非保有株での組み合わせ,2. SM株が分泌する感受性促進ペプチドフェロモン共存の有無,3. CDC保有株のゲノムDNAとHL非保有株の組み合わせなど,条件を変えて解析を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の主要な研究内容は,ミチス-肺炎球菌群で見出された新規コレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)遺伝子産物の特性解析を継続すると共に,CDCなどの溶血毒素(HL)遺伝子のS. mitis(SM)株間での伝搬を実験的に確認し,そこで得られる伝搬株を用いてそのメカニズムの解析を進める計画であった。本年度中に,新たなCDC候補であるtly遺伝子産物の解析を実施し,また遺伝子伝搬解析に用いるCDC遺伝子保有パターンの異なる複数の株及びHL遺伝子非保有株の抗生物質耐性株を調製する事はできたが,年度内にCDC遺伝子伝搬株を得ることができなかった。遺伝子伝搬の条件はその設定自体が伝搬メカニズムの解明に直結するものと考えられ,試行錯誤のステップが多いことから,CDC遺伝子伝搬の検討は予想よりも長引くことになった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 昨年度作製されたスペクチノマイシン(SPCM)耐性のβ溶血性S. mitis(SM)株とクロラムフェニコール(CP)耐性の非溶血性SM株を用いて,様々な菌株の組み合わせや遺伝子伝搬条件(培地組成,組み合わせる菌株各々の生育段階の違いによる組み合わせ,SM株に由来する形質転換促進ペプチドフェロモンの共存など)を設定し,コレステロール依存性細胞溶解毒素遺伝子の伝搬によるCP耐性かつSPCM感受性を示すβ溶血性株の出現の観察と分離を継続する。同様の検討をアンギノーサス群(AGS)に属する菌種の溶血毒素(HL)保有株とHL非保有株においても行い,可能であればミチス-肺炎球菌群とAGS間での遺伝子伝搬も検討する。 2. 次に1でHL遺伝子の受容株が得られた場合については,各HL遺伝子のゲノムへの挿入位置やその周辺配座を親株と比較して遺伝子伝搬機構を検討する。またHL遺伝子受容株とその親株の病原性を比較解析して,HL遺伝子の伝搬と病原性の変化の関連性を解析する。 3. さらに,上記の研究の進捗状況を考慮して当初計画を順次推進する。
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