研究課題
S. mitis(SM)の中には,単数あるいは複数のコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)遺伝子を持ち,その遺伝子産物によりヒト細胞に障害性を示す株が確認されている。これらCDC遺伝子の伝搬によるSMの病原性化機構の解析を進め,SMのCDC遺伝子保有株では各CDC遺伝子がSMゲノムの特定のホットスポットに挿入されていることが判明した。本年度はさらに,CDC遺伝子ローカスの詳細な解析を進めた結果,解析した19株の5ドメイン型CDC(5D-CDC)遺伝子保有株の4株において,5D-CDC遺伝子の直後にトランスポゾンISL3遺伝子を持つことを見出した。また別の1株では5D-CDC遺伝子の上流12kbp付近にISL3遺伝子を持っていた。しかも5D-CDC遺伝子非保有株における5D-CDC遺伝子挿入箇所に該当するローカスには,5D-CDC遺伝子保有株のISL3上流配列と相同性を示す配列が見出された。従って,ISL3遺伝子が関与する大きな遺伝子組換えが起こり,その際に5D-CDC遺伝子がトランスポゾンを介して挿入されてきた可能性が示唆された。そこで5D-CDC遺伝子保有株と非保有株間でのCDC遺伝子の伝搬を,共培養あるいは5D-CDC遺伝子保有株のゲノム存在下に非保有株を培養して検討を行った結果,共培養実験ではコンピテンス刺激ペプチド(CSP)の有無に関わらず5D-CDC遺伝子伝搬株が現在まで得られていないが,5D-CDC遺伝子直後にISL3遺伝子を持つ2株の5D-CDC遺伝子保有株ゲノムと5D-CDC遺伝子非保有株をCSP共存在下で培養した場合には,5D-CDC遺伝子が伝搬した株が出現した。しかしこの遺伝子伝搬株の薬剤耐性によるスクリーニングが困難なため,5D-CDC遺伝子伝搬株を含むポピュレーションからコロニーPCRや5D-CDC遺伝子発現を指標にクローニングを継続している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件)
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