研究課題
本研究では①味蕾におけるMash1の機能の解明、②味蕾におけるセロトニンとGABAの機能の解明、③味蕾細胞の分化に関係する転写因子の探索を目的として、研究を行った。1.成体マウス味蕾におけるMash1発現細胞の細胞系譜を検索:昨年度に引き続きMash1発現細胞の細胞系譜の検討をMash1-CreERT2/ CAG-floxed Neo-EGFPマウスを用いて検索した。5日間タモキシフェン投与後、GFP発現細胞と味蕾の各細胞型のマーカーとの局在を検索したが、2型細胞のマーカーとは一致せず、3型細胞のマーカーのみに局在が一致した。2.成体マウス味蕾におけるMash1の機能解析:Mash1-CreERT2/ CAG-floxed Neo-DTAマウスを作製し、タモキシフェンを投与することで、味蕾におけるMash1発現細胞を変性させることを試みた。タモキシフェン投与により、3型細胞のみの数が減少しているのが確認された。3型細胞のマーカーの中でも、数の減少に差が認められた。以上の結果から、味蕾におけるMash1は3型細胞の分化に関与していることが確認された。3.セロトニン受容体とGABA受容体の発現の検索:RT-PCRで有郭乳頭上皮における各受容体の発現を検索したところ、セロトニン受容体では5HT1Bと5HT3の発現が認められた。GABA受容体のδサブユニットの発現が認められた。これらの結果から、味蕾おけるセロトニンとGABAが味覚情報伝達に何らかの関与が推測された。
2: おおむね順調に進展している
予定されていた研究計画をおおむね遂行することが出来た。コンディショナルノックアウトマウスにおける機能実験を計画しているが、タモキシフェン投与によるマウスの死亡が多いため、データを得ることが出来ていない。効率のよいコンディショナルノックアウトマウス作製を検討中である。
1.味蕾のおけるセロトニン・GABA受容体の発現の検索①セロトニン受容体・GABA受容体のサブタイプの発現をRT-PCR法で検索する。②①において味蕾で発現が認められたセロトニン・GABA受容体の味蕾における局在をin situ Hybridization、免疫染色を用いて検索する。特に発現が認められた受容体が、味蕾のどの細胞型に発現しているのかを各細胞型のマーカー(gustducin, PGP9.5, NCAM, serotoninなど)との2重染色により確認する。2.味蕾におけるセロトニン・GABAの機能検索①Mash1-CreERT2/ CAG-floxed Neo-DTAマウスにタモキシフェンを投与して、味蕾におけるセロトニン産生細胞とGABA産生細胞を変性させる。②2ボトルテストで①のマウスが各味覚に対する感受性の変化が生じているかどうかを検索する。③①のマウスと野生型マウスの舌に味物質(酸味・塩味・甘味・うま味・苦味)で刺激して、舌咽神経ならびに鼓索神経の応答の変化を比較する。
昨年度は、動物の飼育費が予想よりも少なく済み、結果として残額が生じてしまった。
遺伝子改変マウスの購入等に今年度の残額を充てる予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
Acta Histochem. Cytochem.
巻: 49 ページ: 21-28
Oral Surg. Oral Med. Oral Pathol. Oral Radiol.
巻: 121 ページ: 91-95
Arch. Oral Biol.
巻: 62 ページ: 86-92