研究実績の概要 |
根尖性歯周炎は、病巣が骨内に存在しアクセスが困難であるため、難治性の場合抜歯も選択肢となる。本疾患の病巣からは多数の菌種が分離されるが、その病態と菌種の関わりは未だ明らかにされていない。本研究では、本疾患の病態と菌種との関わりの解析を行うことにより、本疾患の診断および病巣の状態に基づいた治療方針の確立に必要な細菌学的エビデンスを確立することを目的とした。 慢性化膿性根尖性歯周炎患者根尖部よりサンプルを採取した。サンプルを得た病巣の病態としては、サンプル採取時に出血を認めたものと排膿を認めた2つのグループから行った。得られたサンプルからDNAを抽出し、PCRにより16S rRNAの V3-V4 領域を含む460bpを増幅した。得られたfragmentをMiSeq (Illumina) を用いて 16S rRNA pyrosequencing を行い、16SrRNAデータベースとの相同性検索を行い病巣部の菌叢を解析した。 16S rRNA pyrosequencingの結果、サンプルから検出されたoperational taxonomic unit (OTU) 数としては、出血性のサンプルからは、97 OTUsであった。検出されたもののうち、Fusobacterium, Prevotella, Dialisterが主要な属であった。。排膿の認められたサンプルからは、127 OTUsが検出され、主要な属としてはPrevotella, Fusobacterium等の出血の認められた群と共通なものに加え、Porphyromonas, Tannerella, Enterococcus, Lactobacillus, Streptococcus等の異なった属が認められていた。 これらの結果から、根尖性歯周炎の病態により病巣部菌叢を構成する菌種が異なっていることが示唆された。
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