研究実績の概要 |
根尖性歯周炎は、う蝕に起因する根尖部の感染性疾患である。本疾患は、無菌動物では発症しない。本疾患の原因としては、露髄によって引き起こされる、口腔内細菌の根管内への侵入があげられるが、病巣の存在部位が顎骨内であるため直接アクセスすることが困難であり、病変部に存在しその病態に影響を与えている菌群についての解析は少ない。本研究では、根尖性歯周炎の病態と病変部に認められる菌群の間の関わりを明らかにすることによって、根尖性歯周炎の診断と、病変部の細菌の情報に基づいた治療方針の確立に必要な細菌学的なエビデンスを確立することを目的として根尖病巣に認められる菌種の網羅的解析を行った。 17サンプルに対し16S rRNA geneのV1-V2領域のpyrosequencing行い、1サンプルあたり1200程度のfragmentの塩基配列の解析を行った。得られた塩基配列から予測されたoperational taxonomic unitは、97%で解析すると1サンプルあたり平均55だった。主な属としては、Prevotella, Porphyromonas, Fusobacterium, Parvimonas, Peptostreptooccus, Streptocuccus, Dialisterが検出されていた。このうちでPrevotella, Porphyromonas, Fusobacterium and Parvimonasが特に検出率が高くなっていた。これらのうち、FusobacteriumとParvimonasは限局した根尖部膿瘍で検出率が高くなっていた。これらの結果は、う蝕から歯髄炎を経て根尖性歯周炎が起こるプロセスで特定の菌種が増加し病態を形成しており、さらにその病変の状態によって菌種に異なりがあることが示唆された。現在病態に影響を与える細菌の正常について解析を進行中である。
|