研究課題
頭蓋顔面領域の硬組織形成とその維持は多能性細胞の移動と局在化、予定域局所での細胞増殖、加えて組織特異的な表現型発現の調和のとれた進行により成し遂げられる。骨組織においては、まず転写因子Runx2とRunx2の下流で作用する転写因子Osterix(Osx)をが骨芽細胞分化と骨形成に必要である。両転写因子の発現と機能は膜性骨化と内軟骨性骨化のいずれの骨化過程において必要不可欠である。硬組織形成を担当する細胞の表現型を最終的に決定する転写因子は明らかとなりつつあるものの、その細胞系譜には多くの不明な点がある。マウスの発生においてOsx遺伝子を神経堤細胞にて破壊すると頭蓋顔面領域前部の膜性骨と歯槽骨の形成が抑制されるが、頭頂部と後頭部の膜性骨形成は抑制を受けない。一方、Osx遺伝子を神経堤細胞と間葉系凝集にて破壊すると頭蓋顔面領域前部、頭頂部と後頭部の骨の形成は抑制を受ける。従って、頭蓋顔面領域の骨は単一の祖細胞に由来するのではないと考えられる。加えて組織形成後の組織構造の維持には骨髄内に局在する多能性幹細胞が深く関わり、ペリサイトがその候補として有力視されている。加えて、神経組織に付随するグリア細胞が歯髄組織の恒常性維持と組織損傷後の修復過程での多能性幹細胞として作動する可能性が報告された。この報告は多能性幹細胞の新たな源泉を示すのみならず、硬組織に張り巡らされた神経組織の生理的意義を再考する必要性を示すと考える。骨形成におけるグリア細胞の役割を追求する為に、遺伝子改変マウスの解析に先んじて、マウスの骨組織発生における神経線維とグリア細胞の分布変化を検討している。
4: 遅れている
遺伝子改変マウスの導入がやや遅れている為に、ROSA26RあるいはROSA26YFPなどの蛍光標識マウスを用いた細胞系譜を追求する試みが遅れている。この実験を補い基礎的知見を集積する為に、マウス発生段階における骨形成と神経組織、グリア細胞の分布の変化を検討している。マウスでは胎生12.5日で骨格の原基が形成されて、その2日後には骨形成が明らかになる。この時、長管骨では肥大化軟骨細胞の細胞外基質の分解がおこり、この分解した基質中に侵入して周囲の間葉組織から骨芽細胞が分化する。Osx欠損マウスでではこの侵入した間葉組織から骨芽細胞の分化がみられないことから、一次骨化中心形成開始時の侵入細胞の解析を行う良いモデルとなる。野生型マウスとOsx欠損マウスの一次骨化中心へのペリサイト、神経線維、およびグリア細胞の分布の変化を免疫組織学的手法で検討しているが、特異的な染色を得がたく、抗体の種類と染色方法を検討している。
野生型マウスとOsx欠損マウスの一次骨化中心へのペリサイト、神経線維、およびグリア細胞の分布の変化を免疫組織学的手法にて検討をすすめる。
遺伝子改変マウスの導入がやや遅れている為に、ROSA26RあるいはROSA26YFPなどの蛍光標識マウスを用いた細胞系譜を追求する試みが遅れている。マウスの飼育と管理の費用、ならびに遺伝子改変マウスの解析費用を次年度使用額として計上したい。
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Journal of Bone and Mineral Research
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10.1002/jbmr.3453