研究課題/領域番号 |
15K11028
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
二宮 禎 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (00360222)
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研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (10367617)
中村 浩彰 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50227930)
平賀 徹 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (70322170)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | RhoT1 / 間葉系幹細胞 / ミトコンドリア / 細胞遊走 |
研究実績の概要 |
本研究は、歯周病による歯の喪失を防ぐため、間葉系幹細胞(MSCs)の細胞間ミトコンドリア輸送能に基づき、歯周病の治療法を開発することを最終目的としている。これまでの研究により、MSCsや破骨細胞にRhoT1が発現していることを明らかにした。これを踏まえ、平成28年度は、RhoT1の作用機序を明らかにするため、細胞接触が重要であることから、組織損傷時の細胞遊走を検討した。本実験では、マウス大腿骨に骨欠損を作製し、その治癒過程におけるMSCs遊走を観察した。細胞遊走に関わると考えられているLRP1を発現した細胞が、欠損3日目に出現し、徐々にLRP1陽性細胞数は増加した。欠損3日目の骨欠損部位から細胞を採取し、MACsによる細胞分離で、LRP1陽性細胞を単離した。単離LRP1陽性細胞は、MSCマーカーを発現していた。また、LRP1陽性細胞は、細胞遊走の際の細胞接着に関与するPaxillinに加え、RhoT1の高い発現を示した。また、マウス上顎第一大臼歯の抜去後の歯槽骨修復においても、同様な現象が生じることを確認している。これらのことより、組織損傷治癒において、MSCsの遊走とRhoT1発現は、相関関係がある可能性が示唆された。さらに、我々は、破骨細胞におけるRhoT1発現を確認しており、このLRP1との関連を検討した。破骨細胞前駆細胞である単球マクロファージは、LRP1およびRhoT1の発現は、認められなかった。しかしながら、分化誘導過程におけるRANKL刺激後、これらの発現の増加が認められた。以上の結果より、RhoT1は、MSCsと破骨細胞において、細胞遊走と細胞接着因子の発現と関連していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に関しては、予定通りに実験を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度から継続して、「MSCsが感知する損傷細胞からのシグナル」に加え、「骨疾患モデルマウスに対するRhoT1改変MSCsの作用」を解明するため、以下の実験を実施する。 1.MSCsが感知する損傷細胞からのシグナルの解明 (1) MSCsによる損傷細胞認識:培養皿を三分割(A, B, C)し、A: RhoT1改変MSCs, B: LPS処理線維芽細胞, C:LPS非処理線維芽細胞を播種し、MSCsの細胞移動、Mt輸送およびTNT形成をタイムラプスで観察する。本実験において、MSCsによる細胞認識の特異性を確認する。(2) MSCsが認識する液性因子の可能性:AにRhoT1改変MSCsを播種した後、LPS処理線維芽細胞および非処理線維芽細胞の培養上清をそれぞれ、B, Cのエリアに滴下する。MSCsの細胞移動、TNT形成、Mt輸送をタイムラプスにより継時的に観察する。以上の実験により、細胞間Mt輸送システムの機序を解明する。 2.病的マウスおよび遺伝子変異マウスに対するRhoT1改変MSCsの作用の検討 (1) OPG欠損マウスおよびRANKL過剰発現マウスに対する作用:これらの骨粗鬆症を呈する遺伝子改変マウスにRhoT1改変MSCsを投与し、骨欠損治癒を試みる。(2) リウマチモデルマウスに対する作用:II型コラーゲンを腹腔投与して、リウマチモデルマウスを作製する。患部にRhoT1改変MSCsを投与し、炎症性骨疾患に対する作用を検討する。(3) 歯周病モデルマウスに対する作用:歯周病モデルマウス(Blood, 2007)を作製し、患部にRhoT1改変MSCsを投与し、歯周病に対する効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を予定よりも安価に購入できたため、次年度使用額が生じた
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、培養系試薬に使用する予定である
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