研究課題
我々は、dimethyl benzanthracene(DMBA)を用いて短期間でハムスターの舌粘膜に上皮性異形成、扁平上皮癌を誘発できる実験系を確立した。本研究は、このハムスター口腔パピローマウイルス(HOPV)の発癌動物モデルおよびヒトパピローマウイルス(HPV)関連癌由来の細胞(CaSki)を用いて、パピローマウイルス感染による口腔領域の癌化をDNAワクチン接種により抑制するための、より安全で効率の高いDNA抗原包埋疎水性プルランナノ粒子(CPHナノ粒子)とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムを開発することを目的としている。本年度は、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムの口腔粘膜での動態の解析を行った。CPHナノ粒子にHOPVの主要遺伝子のnaked pDNAを包埋して、DNAワクチンのデバイスとして使用した。また、このDNA抗原包埋CPHナノ粒子をテープストリッピングした口腔粘膜に塗布して、細胞取り込みを詳細に検討した。その結果、口腔粘膜上皮のランゲルハンス細胞および結合組織内のマクロファージ等に取り込まれていることが病理組織学的に判明した。このことは、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムにより、パピローマウイルス感染関連の口腔領域の癌化を抑制できる可能性が示唆された。以上より、本研究は、ヒトパピローマウイルス感染での癌化予防および治療の研究に大いに貢献すると考えられ、さらにヒトでの口腔癌予防とワクチン治療に大きく寄与する。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムの口腔粘膜での動態の解析を行った。CPHナノ粒子にHOPVの主要遺伝子のL1 naked pDNAを包埋して、DNAワクチンのデバイスとして使用した。また、このDNA抗原包埋CPHナノ粒子にをテープストリッピングした口腔粘膜に塗布して、細胞取り込みを詳細に検討した。緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子とHOPVの主要遺伝子のL1を組み込んだ発現プラスミドを作成してDNAワクチンとしたが、その発現が弱く、蛍光ナノクリスタルを用いてDNAワクチン包埋CPHナノ粒子を標識して行った。テープストリッピングには、市販の粘着テープを小さくピンセットの先に固定して行った。DNAワクチン塗布後、15、30、45、60、120および180分後に頬粘膜を採取して、病理組織学的および蛍光顕微鏡的に検索した。その結果、いずれの経過時間においても、口腔粘膜上皮のランゲルハンス細胞および結合組織内のマクロファージ等に取り込まれていることが判明した。この結果より、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法により、パピローマウイルス感染関連の口腔領域の癌化を抑制できる可能性が示唆され、次年度からの研究解析に問題無く移行できることが確認された。
本研究は、独自のハムスター口腔パピローマウイルス(HOPV)の発癌動物モデルおよびヒトパピローマウイルス(HPV)関連癌由来の細胞(CaSki)を用いて、パピローマウイルス感染による口腔領域の癌化をDNAワクチン接種により抑制するための、より安全で効率の高いDNA抗原包埋疎水性プルランナノ粒子(CPHナノ粒子)とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムを開発することを目的としている。平成27年度は、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムの口腔粘膜での動態の解析を行った。その結果、口腔粘膜上皮のランゲルハンス細胞および結合組織内のマクロファージ等に取り込まれていることが病理組織学的に判明した。このことは、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムにより、パピローマウイルス感染関連の口腔領域の癌化を抑制できる可能性が示唆された。この結果から、平成28年度においては、DNAワクチン包埋CPHナノ粒子とテープストリッピング法による経口腔粘膜のデリバリーシステムの癌化抑制の解析をHOPVの発癌動物モデルおよびHPV関連癌由来の細胞(CaSki)を用いて病理組織学的および分子生物学的に行う。
すべて 2016
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Jounal of Hard Tissue Biology
巻: 25 ページ: 115-126