研究課題/領域番号 |
15K11038
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10432650)
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研究分担者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20112063)
服部 高子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (00228488)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30322233)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90221936)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | osteoclast / CD302/DCL-1 / actin ring / CCN 2/CTGF |
研究実績の概要 |
骨、軟骨組織の増殖、分化においてさまざまな生理活性因子が関与していることが知られているが、中でもCCN2はその多機能性と作用機構の特殊性で知られる因子である。この因子は38kDaの分泌タンパク質であるが、他の様々な因子と結合してそれらの機能を制御することにより多機能性を発揮するものと考えられている。そこでその結合因子を見いだすことで新たな機能を解明できると考え、結合因子のスクリーニングを行った。その結果見いだしたCD302はレクチン様ドメインを持つ膜タンパク質の一種であり、マクロファージなどでの発現が知られている因子である。今回我々が注目した破骨細胞はマクロファージ系の前駆細胞から分化するにも関わらず、CD302の発現や機能は全く報告されていなかった。そこで我々はこの因子の遺伝子が成熟破骨細胞において発現していることや破骨細胞の成熟に伴って形成されるアクチンリング周辺に多く存在すること、さらにはCD302の発現を抑制すると骨吸収能が低下することを明らかにした。さらに破骨細胞の分化過程においてsiRNAを用いてCD302の発現を抑制したところ、TRAP陽性の成熟破骨細胞数が減少した。また、この時の破骨細胞の様子をタイムラプス撮影して観察したところ、すでにアクチンリングを形成している細胞ではリングが断片化する様が見られた。また、免疫沈降法によりCD302はアクチンおよびCCN2のそれぞれと結合することも示してきた。これらの結果に加えて当該年度ではCD302の細胞内でのシグナル伝達因子の解明を中心に解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞骨格が関連するシグナル伝達系においてしばしば活性が見られるFakのリン酸化はCD302の発現を抑制してもあまり変化が見られなかった。また、細胞の生存に関わっている可能性があるためCD302がAktの活性に影響を及ぼしている可能性も考えられたが、Fakと同様にCD302の抑制によって変化は見られなかった。その一方で抗CD302抗体を用いた免疫沈降法によりSHP-2とSykはCD302と結合する可能性があることが分かった。 さらにマウス骨髄細胞由来破骨細胞前駆細胞からの破骨細胞誘導系にrCCN2を添加してもCD302の発現自体は変化しないことも分かった。CD302を抑制してもCCN2は変わらないのでこれらはお互いにその発現自体を制御するのではなく直接的あるいは間接的にタンパク質同士の結合を通して影響を与えていると考えられる。 また、CD302発現ベクターの作成に成功し、このベクターに由来するマウスCD302タンパク質の過剰発現が確認できている。今後これを用いた免疫沈降法によりSyk SHP-2などのシグナル伝達因子との関連やアクチン、CCN2との直接的、間接的結合およびこれらの結合を介した機能制御およびこれらの機能におけるITAM様配列の影響についても検討しつつ、次年度は最終年度であることから本研究をまとめる準備をさらに進める。
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今後の研究の推進方策 |
CD302 の細胞内ドメインに half ITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif) と呼ばれるアミノ酸配列を有していることが分かっている。そこでITAM シグナルの下流に位置するSHP-2およびSykとCD302との免疫沈降法を行ったところ、これらのタンパク質同士の結合を示唆するデータが得られている。また現在、mouse CD302タンパク質発現ベクターの作成に成功しており、これを用いてSHP-2およびSykなどのシグナル伝達因子やこれまでに結合が確認されているactin、CCN2との結合を併せて確認し、これらの結合との結合が互いにどのように影響し合っているかについて検討を進める。さらに half ITAM motif に変異を導入した発現系を作成し CD302 の機能におけるこの部分の影響を調べることを計画している。 それと平行して破骨細胞誘導系においてactin ringの発達の乏しくCD302 発現の低い細胞株であるRAW264.7 cell line にCD302を強制発現させることでこの細胞株を用いた培養系で actin ring の形成を促進できるかどうかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内に計画していた作業の一つであるCD302 の強制発現ベクターの作成に手間取ったため、それを用いたCD302の強制発現による破骨細胞の形態変化の観察や他のタンパク質との結合実験などのための時間がなくなった。その結果、これらの実験内容を次年度に繰り越さざるを得なくなったため、そのための費用が未使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
CD302タンパク質の強制発現ベクターの作成に成功したのでこれを用いて関連が予想されるシグナル伝達因子や結合が示されているタンパク質との結合を確認し、さらにこれらの結合が互いに及ぼす影響を調べていくため、それぞれのタンパク質を認識する抗体を購入する必要がある。また、CD302によるシグナルを明らかにするためそれぞれのシグナル伝達因子の活性化体に対する抗体も必要である。さらに次年度は最終年度であることから本研究の成果を論文にまとめるための英文校正費用および投稿料にも本研究資金を使用する予定である。
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