研究課題/領域番号 |
15K11043
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 啓子 (安松啓子) 九州大学, 味覚・嗅覚センサ研究開発センター, 准教授 (50380704)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 味覚 / 鼓索神経 / 伝達物質 / うま味 / 塩味 |
研究実績の概要 |
味細胞から神経への伝達物質についてはその候補物質がいくつか提案されているものの、ある味質を受容する細胞とその細胞から分泌される神経伝達物質の関係はATP に関するもの以外は明らかになっていない。そこで脂肪酸の味、塩味、そしてうま味の伝達物質について明らかにすることが本研究課題の目的である。当該年度において、単一神経応答を記録しながら、基本味のうちどれに応答するかプロファイルを見た後、大腿動脈に設置するカニューレより試薬を静脈投与し、伝達物質は何の味を伝えるかを調べた。 その結果、鼓索神経線維のうちHClに最も高いインパルス頻度を示す神経(E-type)を記録中にマウス大腿静脈より100μg/kgのSerotoninを投与したところ、およそ75%の神経が投与開始約63秒後に有意な応答(刺激時のインパルス頻度>無刺激時インパルス頻度+2SD)を見せた。一方NaClに特異性が高く、アミロライドによって抑制を受ける線維群(N-type)では現在Serotoninに応答する線維は見いだせない。 うま味に関しては、記録したグルタミン酸に最も高い応答を示す線維(M-type)のうち約50%(14本中7本)の神経が静脈投与した20μg/kgのGLP-1に有意な応答を示した。次にGLP-1に応答を示す神経線維が結合する味細胞にはT1R1+T1R3、mGluR1、mGluR4のいずれが発現し機能しているかを調べるために、MPGにmGluR1、mGluR4のアンタゴニストであるAIDAとCPPGをそれぞれ1mM添加し舌を刺激したところ、これらのアンタゴニストにより抑制を受けない神経がGLP-1に応答を示した。この結果から、mGluR1, mGluR4以外のうま味受容体であるT1R1+T1R3もしくはそのどちらかが発現する味細胞の神経伝達物質はGLP-1であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では平成28年度には、27年度に行った伝達物質候補試薬のテストの結果に基づき、マウス鼓索神経単一神経の応答記録を行う予定となっていた。脂肪酸の味、塩味、そしてうま味の伝達物質の中でうま味(M-type)と塩味(E-typeとN-type)に関する結果から、受容機構が違うと伝達物質も違なることを発見した。従ってこれら以外の味覚に関しても受容-神経伝達の対応関係があり得るという仮説が得られた。さらに今年度において甘味受容システムと脂肪酸受容伝達システムに関し新たな分子および神経伝達の可能性が浮上しており、本課題とそれらの発見を結びつけることで、より詳細な受容と神経伝達のルートが明らかになる可能性が出てきた。その発展性と重要性からこの評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き単一神経応答を記録しながら、基本味のうちどれに応答するかプロファイルを見た後、試薬を静脈投与し、伝達物質は何の味を伝えるかを調べていきたい。特に次年度は脂肪酸の味の伝達物質に関しても調べたい。最終的には脂肪酸の味、塩味、そしてうま味の受容システムそれぞれに対応する伝達物質を検討したい。また、分子発現を確認するため免疫染色法も味細胞と膝神経節について行いたい。
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