味細胞に発現する甘味受容体TAS1R2/TAS1R3は、全身の様々な臓器に発現し、エネルギー受容センサーとして生体恒常性の維持に寄与することが示唆されている。生体恒常性の破綻は、生活習慣病につながる可能性があり、甘味受容機構の解明により、これらの予防、治療に役立つ味覚修飾物質の発見や、創薬につながることが期待される。その基礎として、甘味受容体TAS1R2/TAS1R3と基質との結合特性および受容体の生理的機能を解明することが必要不可欠である。 本年度は、甘味受容体TAS1R2/TAS1R3と味覚修飾物質ミラクリンとの相互作用の解明を行った。ミラクリンは、酸性条件下で甘味を誘導するが、強酸と弱酸でその効果が異なり、弱酸で強く誘導されることが知られている。弱酸は非解離体で細胞内に拡散、解離することで細胞内pHをさげ、甘味受容体の細胞内領域をプロトン化する。これにより、ミラクリンと甘味受容体の相互作用が進み、甘味誘導効果が強く表れることが明らかにされた。
|