研究課題
破骨細胞は膜表面に面した膜に酸や酵素を盛んに分泌する極性を持った多核細胞で、その成熟破骨細胞への分化過程には小胞輸送の様々な過程が関わっている。しかしながらその調節機構はまだ不明な点が多い。本年度においては、申請者らがマイクロアレイ解析で明らかにした膜トラッフィッキングの調節因子Nedd4アダプタータンパク質の破骨細胞分化おける発現と機能の解析及びノックアウトマウスの作成を行なった。Nedd4アダプタータンパク質は、マクロファージ細胞RAW264 や骨髄マクロファージにRANKLを添加すると発現が24時間で上昇し、免疫染色ではプラスチック上で破骨細胞の前駆細胞に発現が見られたが、多核の破骨細胞に発現が見られなかった。しかし、骨髄由来の破骨細胞前駆細胞を象牙質の上で培養し形成した破骨細胞において強く発現することがわかり、破骨細胞での発現誘導に骨基質成分からの刺激が関与すると考えられた。さらにこのタンパク質の細胞内の局在を調べた結果、エンドソームやカテプシンKとの共局在が認められた。また、ラットアジュバント関節炎の骨破壊部位の免疫染色によりin vivoの破骨細胞において発現していることがわかった。このNedd4アダプタータンパク質の機能を調べるため、RAW264 細胞でsiRNAにより発現を抑制すると、破骨細胞の分化が抑制された。さらにマクロファージRAW264 細胞でその発現を抑制した時の、細胞表面のCD11bとRANKの発現をFlow cytometryにより解析した結果、RANKの発現が選択的に抑制され、細胞表面への輸送の制御に関わることが考えられた。さらに、Crisper-Cas9システムを用いてこのタンパク質のノックアウトマウスの作成を試みた。ゲノム解析を行ない、germlineの伝達とヘテロノックアウトマウス樹立を確認した。
2: おおむね順調に進展している
本年度においては、Nedd4アダプタータンパク質の発現誘導の詳細な解析を行い、その機能をsiRNAによる発現抑制により明らかにし、さらにノックアウトマウスを作成することが目的であった。その結果、プラスチック上では発現が誘導されず、骨の上でのみ破骨細胞において発現が誘導されるという誘導機構が明らかになった。この発現誘導に関わる骨基質成分についても解析を行なっており、非常に独特な発現誘導をするタンパク質であることが明らかになった。さらに、このタンパク質の発現の抑制がRANKという破骨細胞の分化に重要なタンパク質の細胞表面への輸送に関わることも明らかにした。また、Crspr-Cas9システムを用いてノックアウトマウスを作成することも出来た。
今年度の結果をもとに、Nedd4アダプタータンパク質の機能の詳細を明らかにしていく。どのようなタンパク質と相互作用するか、破骨細胞における活性化のシグナル因子や伝達機構と関わりについて解析を行なう。またノックアウトマウスを用いてin vivoにおける働きや骨代謝における機能についての解析を行なう。
本年度においてはCrisper-Cas9システムを用いたノックアウトマウスの作成等に費用を当てていたが、共同研究で行なったことと、予想より多くの実験を必要としなかったことから、物品費に余裕が生まれた。来年度で行なうタンパク質の機能解析やマウスの解析には予想より多くの費用を要することが考えられるため、来年度の研究費に使用することにする。
来年度においては、ノックアウトマウスを用いてμCTを用いたマウスの骨量の測定や尿中のコラーゲン分解物を測定し骨代謝の動態等を解析する。さらに様々な抗体を購入しノックアウトマウスの細胞由来の破骨細胞の分化や活性化についてWestern解析、共焦点レーザー顕微鏡による解析及びFlow cytometryによる解析を行なう。
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Arthritis Reseach & Therapy
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http://www.microbio.med.saga-u.ac.jp/biodefense/per-kuki.html