研究課題/領域番号 |
15K11047
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
根本 孝幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (90164665)
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研究分担者 |
小早川 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 技術職員 (10153587)
根本 優子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (10164667)
木村 重信 関西女子短期大学, 歯科衛生学科, 教授 (10177917)
馬場 友巳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60189727)
下山 佑 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (90453331)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 歯周病 / エキソペプチダーゼ / プロテアーゼ / DPP / Porphyromonas gingivalis / Prevotera intermedia / Trepanema forsythia |
研究実績の概要 |
1 歯周病原性細菌Porphyromonas gingivalisにおける新規エキソペプチダーゼの同定 歯周病原性細菌P. gingivalisにおけるエキソペプチダーゼの役割をさらに検討した。その結果、従来我々が見出してきたDPP5、DPP11以外にAOPと命名したN末端修飾ペプチドを分解できるエキソペチダーゼが存在することを明らかにした。AOPはP. gingivalis以外の菌においてもこれまで知られていなかった初めての発見である(Nemoto et al., JBC, 2016)。
2 P. gingivlias以外の歯周病原性細菌におけるエキソペプチダーゼの同定 歯周病の発症にはPrevotera intermediaやTrpoema intermediaなどのグラム陰性菌も関与する。そこでこれらの菌におけるエキソペプチダーゼの発現を検討した、P. intermediaにおいてArg特異的アミノペプチダーゼが発現していることを突き止めた。さらにこの遺伝子をPCRクローニングして活性型分子の発現にも成功した(T. Sarwarら、未発表)。
3 歯周病と2型糖尿病をリンクするエキソペプチダーゼの可能性 ヒトジペプチジルププチダーゼDPP4は、膵臓でのインシュリン分泌誘導能のあるインクレチン類(GLP-1とGIP)のN末のジペプチドを遊離して不活化させる。そのためヒトDPP4阻害剤は非常に有効な2型糖尿病の治療薬となっている。そこで我々はP. gingivalis、Prev. intermedia、T. fortsythiaよりDPP4を発現精製して性質を検討した。その結果、合成基質やインクレチン類に対してヒトと細菌のDPP4が同様の分解活性を有することを確認した。さらにマウスにおける耐糖試験によって、細菌DPP4の静注が、高血糖値の正常値への回復時間を遅らせることを見いだした(Ohara-Nemotoら 論文投稿中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に述べた項目1-3のうち、項目1については、2016中に新規のエキソペプチダーゼを同定して論文を上梓することができた。さらに我々は、DPP7とDPP11について、一部の菌で性質のやや異なるサブタイプが存在することを見出している(根本ら 日本細菌学会発表 2017年3月)。 項目2は当初予定していなかった望外の成果である。現在クローニングした分子の性質の決定を進めている。 項目3は本課題のメインテーマであるが、すでに現在論文(Ohara-Nemoro et al., under submission)を投稿、レビューアーの返事があり、その指示に元づいて4月に再投稿した。もうすぐアクセプトされると期待している。さらにこの結果を元に研究を発展させて当初予定の結果を出して行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
項目1-3についてさらに検討を進める。 特に、項目2においては、Prev. intemedia菌の発現する新規アミノペプチダーゼを同定することができたが、それ以外にも未知のDPPあるいはオリゴペプチダーゼが発現することを見出している。この遺伝子についても検討を進める。 項目3においては、歯周病原性DPP4が2型糖尿病の悪性化に働く可能性を提示することができた。今後は歯周病患者において、細菌性DPP4が実際にそのベクトルに働いているのかどうかを決定する。また我々は基質特異性の異なるDPP5、DPP7、DPP11も発現しているので、これらDPPにもなんらかの作用があると考えている。例えば犬や猫の咬傷が時にヒトに対して致死性の敗血症を引き起こすことがあるが、その原因が口腔細菌の持つDPP7による凝固反応因子の分解にあるという報告が2017年になされている。事実であればヒト口腔細菌の有するDPP7にも同様の作用がある可能性があるので、この点を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(20,814円)が生じた。しかし一部(5,230円)は学外分担者の分であり、代表者がコントロールできなかった。いずれにしても少額なので平成29年度に使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
蛍光基質は高額なので残りはこの購入に充てる予定である。
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