研究課題
高齢社会では、顎関節や四肢、指趾を構成する関節の障害が運動機能の低下によるロコモティブシンドロームの原因となっており、その対策は急務である。従来より亜鉛の代謝異常が骨格成長異常や老化に関わる事が示唆されているが、その詳細は不明である。本研究は、関節疾患の予防と修復へ応用できる新たな生理的・病態機序の解明を目指し、骨格成長における亜鉛の代謝異常がおよぼす影響について解析を行ってきた。解析には、Cre-loxPシステムによる軟骨特異的ZIP10(亜鉛トランスポーター)欠損マウスを作製し、骨格形成への影響を解析した。その結果、骨・軟骨特異的特異的ZIP10欠損マウスはいずれも胎生期より四肢の長さの短縮や骨格形成の異常を生じ、ZIP10が骨格形成に必須であることが明らかとなった。さらに、顎顔面骨の形成も著しく障害されていた。そこで、野生型と欠損マウスからそれぞれ軟骨および骨細胞を採取し、次世代シークエンサーを用いて発現遺伝子解析を行い、両者間で発現差異のある遺伝子の網羅的に解析し、ZIP10依存性に変動する遺伝子群の抽出を行なった。In vitroの系では、ZIP10が未分化間葉系幹細胞や骨芽細胞、軟骨細胞で定常的に働く一方で、慢性関節炎症性疾患における関節破壊においては細胞内外のカルシウム濃度の変化が骨軟骨細胞の代謝を制御することから細胞内シグナルの変化について培養細胞を用いてZIP10のgain- とloss- of function を解析した。本研究より得られた知見は亜鉛を標的とした新しい関節障害の治療法の開発に役立つ事が期待できる。
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