研究実績の概要 |
炎症性骨疾患は骨吸収の亢進により機能障害が生じ、患者のQOLが著しく低下することから、発症機序の解明と根本的治療法の開発が急務である。以前、転写因子Interferon regulatory factor 8 (IRF8)は免疫担当細胞である樹状細胞の分化制御因子として発見されたが、最近、骨吸収を担う破骨細胞の分化を抑制する因子であることも報告された(Zhao B. et al. Nat Med, 15, 1066-1071, 2009)。しかし、病的環境下でのIRF8の機能は未だ不明な点が多い。そこで、申請者は、「転写因子IRF8は免疫担当細胞を介した炎症反応と破骨細胞分化を介した骨破壊の両方のプロセスに重要な役割を担う」と仮設を立て、IRF8を中心とした炎症性骨疾患の発症機序の解明に取り組んだ。 野生型マウスとIRF8遺伝子欠損(IRF8 KO)マウスにⅡ型コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルマウスを作製し、その機能解析を行った。関節炎の炎症の重篤度を示すRAスコアを算出したころ、野生型マウスと比較して、IRF8 KOマウスで誘導した関節炎はRAスコアが有意に高いことがわかった。つまり、IRF8が欠損した状態では関節炎の発症が重症化することが示唆される。また、膝関節を中心に大腿骨から頸骨の組織切片を作製しHA染色を行ったところ、IRF8 KOマウスの膝関節腔内に炎症性細胞の浸潤、滑膜の肥厚などが観察された。そこで、IRF8 KOマウスの関節炎を重篤化させる責任細胞の同定を試みた。その結果、IRF8 KOマウスの骨髄内でミエロイド系細胞が増加している可能性が示された。さらに、ミエロイド系細胞のうち、具体的にどの細胞が増加しているのか詳細に検討を行った。
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