研究課題/領域番号 |
15K11055
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
山田 好秋 東京歯科大学, 歯学部, 客員教授 (80115089)
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研究分担者 |
石田 瞭 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00327933)
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 嚥下 / 咀嚼 / 気圧 / 発話 |
研究実績の概要 |
初年度は気圧センサを口腔内に設置した際の動作評価、嚥下動態導出能評価ならびに機器の小型化・無線化を果たした。28年度は水分や食塊さらには軟組織が接触する口腔・咽頭内での圧記録の信頼性について検証した。Donders空隙の圧変化を論文として投稿する際、気圧センサが口腔内で使用される時に懸念される唾液や食物片の影響ならびに計測する空間が微少となるにつれ軟組織が直接センサに接触することによる計測結果の誤差が指摘された。センサを薄いゴムなどで覆うことで大きな圧変化に対しては外部環境の影響を排除して記録可能であるが、Donders空隙の圧変化は微細であり、センサをそのまま使用することとした。その結果、Donders空隙の圧変化記録においては記録直前の大気圧と記録終了後の大気圧変化にセンサの分解能以上の誤差が出た場合にはこのデータを排除することで記録の精度を確保した。その結果、論文は受理された(Application of a barometer for assessment of oral functions: Donders space. J Oral Rehabil. 2017, 44(1):65-72.)。気圧センサを経鼻的に中咽頭に留置する研究ではセンサを薄いゴムで覆い、粘液、唾液、食塊の影響を排除した。その結果、嚥下に伴い、口腔期に一致すると考えられる小さな圧変化と咽頭期に一致すると考えられる大きな圧変化が記録され、これまでVFでの観察でも困難であった、嚥下口腔期と咽頭期が明確に区分できる可能性が指摘された。現在、専門誌に投稿し査読が行われている。このほか、センサを複数制御できるシステムを完成させ、咽頭・Ah-line・口蓋切歯部にそれぞれ設置し、発声時の圧変化を部位別に評価し、舌と口蓋により形成される微小空間の動態を計測している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請段階では26年度以降の研究テーマとして長時間記録の障害としてセンサの食物や唾液による汚染、センサの脱落に対する対策が挙げられていた。概要で示したように、非常に微細な圧変化に対してはセンサをカバー無しで使用する必要がある。その際には実験前後での大気圧記録を比較することで、センサ出力が影響を受けていないことを確認することで対処できた。薄いゴムやラップに使う薄いプラスチック等でセンサを覆うことで完全な防御ができる。センサの感度が1-kPa程度まで低下するが、嚥下時の圧変化は口腔内・咽頭内いずれにおいても数十kPaであり、生理学的研究には十分な感度・分解能を維持できることを明らかにした。現在、口腔・咽頭内気圧計測システムの詳細を論文としてまとめる準備をしている。センサの固定も検討することにしていた。Donders空隙の圧変化記録に際しては義歯接着剤を使用した。咽頭の圧変化記録に際しては鼻孔からセンサを挿入し、センサ出力用のワイヤーを鼻孔付近に固定することでセンサを固定しきた。今年度は口腔内で安定して記録できるようにスプリント用のシートに固定する方法を考案した。以上、申請段階で予定した計画以上に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
圧センサの利用は意外に広く、嚥下頻度を計測するだけにとどまらないことが明らかとなった。特に、嚥下口腔期と咽頭期が咽頭に設置したセンサで記録できるが、可能であれば口腔内から咽頭にセンサを設置できればより研究の幅が広がる。さらに、別の研究テーマで嚥下時の舌筋電図を記録したところ、舌尖の筋活動が嚥下口腔期の小さな活動と,嚥下咽頭期の大きな活動に分かれることが明らかとなりつつある。そこで、最終年度は咽頭、口蓋後方、口蓋前方の3カ所にスプリントを使用してセンサを3つ固定し、舌筋筋電図および舌骨上筋群の筋電図と同時記録することで嚥下の口腔期と咽頭期の圧変化、舌筋、舌骨上筋群の活動タイミングを詳細に観察し、嚥下の生理学を補強する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は咽頭、口蓋後方、口蓋前方の3カ所にスプリントを使用してセンサを3つ固定し、舌筋筋電図および舌骨上筋群の筋電図と同時記録することで嚥下の口腔期と咽頭期の圧変化、舌筋、舌骨上筋群の活動タイミングを詳細に観察することを目的としてる。一連の実験計画では、多数のセンサを必要とするため、その購入費用とする。
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