研究課題/領域番号 |
15K11056
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
渋川 義幸 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (30276969)
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研究分担者 |
田崎 雅和 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40155065)
佐藤 正樹 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (80598855)
木村 麻記 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (90582346)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯学 / シグナル伝達 / 神経科学 / 生理学 |
研究実績の概要 |
歯髄に炎症性反応(歯髄炎)が生じると神経終末から炎症局所に様々なシグナル分子としての神経ペプチドが放出され、歯髄内血流・炎症性反応は増加し、激しい疼痛がもたらされる。これら歯髄炎制御シグナル分子の詳細な細胞効果は明らかではない。本研究では歯髄を構成する象牙芽細胞-歯髄ニューロン-血管内皮細胞の共培養系(歯髄炎症in Vitroモデル)を確立する。炎症進行に応じた1)象牙質破壊モデル、2)神経原性炎症モデル、3)血流増加モデルにおいて、歯髄炎制御シグナル分子が、どのように多種細胞で構成される歯髄の細胞「間」情報伝達系に作用するのか、その動態を明らかにする。 平成27年度には、象牙芽細胞‐歯髄(三叉神経節)ニューロン‐血管内皮細胞による三細胞共培養系の確立に先立ち、象牙芽細胞‐歯髄(三叉神経節)ニューロン培養系を確立した。象牙芽細胞に単一細胞刺激を加えると、細胞外へのグルタミン酸放出が生じる事を明らかにした(Cell Calcium, in Revision)。また三叉神経節ニューロンに対する機械刺激は細胞内カルシウムイオン濃度の増加をもたらし、この増加は特定の化合物で抑制された。加えて、象牙芽細胞に三叉神経節ニューロンから放出されるであろうsubstance Pあるいはneurokinin Aを投与すると、細胞内カルシウムイオン濃度が増加した。これらの事から、歯髄細胞間の情報伝達系における伝達因子に関するデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように、平成27年度には、象牙芽細胞‐歯髄(三叉神経節)ニューロン間におけるグルタミン酸を介した情報伝達、三叉神経節ニューロンの機械刺激感受性(歯髄内炎症にともなう内部圧力増加による疼痛発生をモデル化している)とその抑制因子の同定、象牙芽細胞における三叉神経節ニューロン由来神経ペプチド(substance Pあるいはneurokinin A)受容体の存在を明らかにし、歯髄の細胞間の情報伝達系についての予備的なデータが得られた。しかし、平成27年度に策定していた、象牙芽細胞‐歯髄(三叉神経節)ニューロン‐血管内皮細胞による三細胞共培養系による種々の実験計画は実施されていない。平成28年度には、三細胞共培養系を確立し、炎症進行に応じた細胞モデルを用いた細胞間情報伝達を明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、象牙芽細胞‐歯髄(三叉神経節)ニューロン‐血管内皮細胞による三細胞共培養系を確立し、炎症進行に応じた細胞モデルを用いた細胞間情報伝達を明らかにする予定である。特に、ニューロントレーシング用カルボシアニン膜色素で標識した歯髄分布三叉神経節ニューロンの調製と培養を行う。カルボシアニン膜色素蛍光から同定されたニューロンと内皮細胞(RMVEC)および象牙芽細胞から空間特異的な細胞内カルシウムシグナルを解析し、炎症進行に応じた、1)象牙質破壊モデル、2)神経原性炎症モデル、3)血流増加モデルにおける歯髄炎制御シグナル分子ネットワークを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には、直接経費の99.7%を使用したが、端数が生じた。発生した次年度使用額は、平成28年度に適正に執行する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞膜イオンチャネルに作用する、非選択的アンタゴニストを購入する。
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