研究課題/領域番号 |
15K11057
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
近藤 真啓 日本大学, 歯学部, 講師 (50312294)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 神経損傷 / 下歯槽神経 / 細胞接着分子 |
研究実績の概要 |
神経軸索が損傷を受けると、感覚鈍麻や神経障害性疼痛などの感覚異常が生じる。この異常は時に難治性であり、歯科臨床の場で深刻な問題の一つになっているが、その原因はいまだ明らかにされていない。我々は、損傷軸索の再生過程において感覚神経回路の修飾・改変が起こることがその一因であると考え、これを検証するために本研究を開始した。 マウスの左側下歯槽神経を切断して神経損傷モデルを作製した後、経日的に、オトガイ部に機械刺激を与えて逃避反射閾値を測定した。切断後1週間後は逃避反射閾値の顕著な上昇(非切断時の2倍刺激でも反射が起こらない)が認められた。切断後2週間が経過すると反射閾値が徐々に低下(1.5~1.7倍の刺激で反射出現)し始め、切断後4週間では損傷モデル動物の一部で対照群を下回る逃避反射閾値(感覚過敏)が観察された。 一方、我々はこれまでに、三叉神経脊髄路核(口腔感覚情報を受容する感覚ニューロンの投射領域)のII層のisolectin B4(IB4)陽性領域(侵害性機械刺激情報の入力部位)においてE-cadherinが、II/III層全般(侵害性機械および熱刺激に対する情報が到達する部位)においてN-cadherinが発現していることを明らかにしてきた。そして今回、損傷モデル動物を用いた実験において、切断1週間後、患側のVc内においてE-cadherinおよびIB4の免疫活性が有意に減少し、切断1ヶ月後まで持続すること、N-cadherinの発現量には有意な変化が認められないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いた神経損傷モデル(下歯槽神経の切断)の作製法を確立し、さらにまた、軸索損傷に伴う感覚閾値の変遷、および機能分子(cadherin)の発現変動について経日的に明らかにすることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
下歯槽神経損傷後の軸索再生過程、およびシナプス結合数の変化について経日的に解析していくとともに、先に明らかにした細胞接着分子群の発現変動との連関について明らかにしていく。また、感覚ニューロンにおける各種機能分子の発現変動も併せて解析していく。さらに、これと平行して、Drosophilaを用いた軸索の伸展・分枝・再生に関わる機能分子のスクリーニングおよび損傷実験モデルの構築を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究助成金の使用開始が10月であったこと、ショウジョウバエを実験モデルとした研究の前にマウスの神経損傷モデル作製を先行させたことなどから、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度繰越金は遺伝子改変動物の作製・維持・管理にかかわる経費として使用するとともに、実験動物用インキュベータが故障したためにその修理費に当てる。また、次年度分に関しては、当初の計画通り、免疫組織化学および分子生物学的解析のための抗体・試薬購入(消耗品)費、研究成果の発表および情報収集のための会議参加費、実験動物の管理援助のための人件費に当てる。
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