研究実績の概要 |
一群の転写因子やサイトカインのmRNA の3’非翻訳領域(UTR)にはAU-richelement(ARE)と呼ばれる配列が存在し, これらのmRNA(ARE mRNA)の半減期は極端に短い. ELAVL1 はARE mRNA を特異的に安定化させ, その細胞質局在が悪性腫瘍症例の予後と相関することが報告されている. 今回, 神経特異的に発現するとされるELAVL2 に注目し, 口腔扁平上皮がんの分化度との関連性を検討した.Real Time PCR 法により, 低分化型口腔扁平上皮がん細胞株SAS のELAVL2 mRNA 発現量は高分化型口腔扁平上皮がん細胞株HSC2 に比較して圧倒的に高いことが示された. HSC2 ではELAVL1 が核局在性を示したが, SAS では細胞質への移行がみられた. 免疫沈降法により細胞質中のELAVL1 がELAVL2 と結合していることが確認された. さらに, ELAVL2 を強制発現したHSC2 ELAVL2 では, ARE 配列を有する遺伝子の発現亢進が認められ, 中でも幹細胞性の制御に関わり3’UTR にARE を有するLin28B はELAVL2 の強制発現により発現が上昇していた.ヌードマウスに移植したHSC2 ELAVL2 では, 角化傾向の低い腫瘍胞巣が多数認められ, ELAVL2 が口腔扁平上皮癌の分化に大きな役割を果たしている可能性が示唆された.
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