研究実績の概要 |
我々は、神経特異的に発現するとされるELAVL2 に注目し, 口腔扁平上皮がんの分化度との関連性を検討してきた.Real Time PCR 法により, 低分化型口腔扁平上皮がん細胞株SAS のELAVL2 mRNA 発現量は高分化型口腔扁平上皮がん細胞株HSC2 に比較して圧倒的に高いことが示された. HSC2 ではELAVL1 が核局在性を示したが, SAS では細胞質への移行がみられた. 免疫沈降法により細胞質中のELAVL1 がELAVL2 と結合していることが確認された. さらに, ELAVL2 を強制発現したHSC2 ELAVL2 では, ARE 配列を有する遺伝子の発現亢進が認められ, 中でも幹細胞性の制御に関わり3’UTR にARE を有するLin28B はELAVL2 の強制発現により発現が上昇していた.ヌードマウスに移植したHSC2 ELAVL2 では, 角化傾向の低い腫瘍胞巣が多数認められ, ELAVL2 が口腔扁平上皮癌の分化に大きな役割を果たしている可能性が示唆された.平成28年度は、ELAVL2の発現が亢進している細胞についての解析を進めた。特に注目したのはHEK293細胞であり、MCF7などに比べ20倍以上のELAVL2発現の亢進がみられた。そもそもHEK293細胞は5型アデノウイルス遺伝子により形質転換した細胞であるので、その他のアデノウイルス初期遺伝子によりELAVL2 経路が活性化されるか否かを検討したところ、E4orf4に大きな活性を認めた。E4orf4抗体の作成により、本タンパク質が核‐細胞質をシャトルすること、ELAVL2と結合することなどが明らかとなった。
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