不完全な投影データを用いたり,投影データの削減を行ったりした場合,X線CT画像再構成にどのように影響するか,統計的再構成法アルゴリズムで画質が維持されるか検討した。投影データを間引いて削減したり,投影角度を制限すると,患者の被ばく線量が格段に下がったり,撮影装置のコンパクト化も可能になる。 統計的画像処理法であるART(Algebraic Reconstruction Technique)法についてフィルタ補正逆投影法(Filtered Back-Projection,FBP法という)と比較して示した。スパース(疎性)モデリングによる圧縮センシングを利用して,全変動(total variation)正則化をキー技術として,投影データ量を削減可能な処理法の開発を行った。そして,360度ないし180度の投影データに対し,X線CT画像再構成に用いるプロジェクションデータを約10分の1まで減らした。顎顔面領域のCT画像に対して実行したところ,ART法とTV正則化を組み合わせて,投影データの削減(最大で10分の1)の実現可能性を示した。また,従来のFBP法との違いやART法とTV正則化の組合せの有効性も明らかにした。この研究は,2018年9月に学術雑誌に掲載された。しかも,最速降下法によるTV正則化は,L2ノルム正則化の工夫により計算負荷の増大を示さなかった。さらに,先験的画像制約付きの加重TVを与えた場合も,スパースな投影データに対し画質劣化のない画像再構成が可能となった。 統計的再構成アルゴリズムを用いたときはFPB法よりも画質劣化が起きていなかった。X線CT画像の再構成において投影データを10分の1に減らせる可能性を示した。ART法と組合わせたTV正則化は計算負荷も顕著に増加させないため,臨床応用可能な新知見を得たと考えている。
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