研究課題/領域番号 |
15K11068
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
栗林 亜実 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00431932)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血管奇形 / MRI / ASL / 頭頸部 |
研究実績の概要 |
頭頚部の血管奇形に対して適切な治療を行うには、その病態を正確に診断し治療方法を決定する必要がある。特に病変内部の血流速度の評価が重要となり、臨床では造影 MRI や造影 CT による ダイナミックスタディが行われているが、いずれも造影剤を使用するため腎臓への負担が大きい。当該研究で行う撮像法である ASL(arterial spin labeling)は血液のプロトンを内因性のトレーサ ーとして利用する手法で、造影剤を用いずに血流を測定することができる。今までは得られる画像の signal-to-noise ratio が低いために研究レベルにとどまっ ていたが、高磁場装置(3T MRI)の普及や技術の向上によって画質が改善し臨床応用され始めている。しかしその多くは脳内病変に用いられており、頭頚部とくに血管奇形への応用はこれまで 報告が少ない。当該研究では ASL によって造影剤を使用しない低侵襲な検査を可能にし、血管奇形の全く新し い病態評価方法を確立し治療法の選択に役立てていくことを目的とする。そのため昨年度はまず頭頸部領域のASLの撮像法の最適化を行った。頚部においてラベルされた血液が口腔内の撮像領域に達する時間を考慮する必要があるため、目的の部位にあわせて 撮像パラメーターの1つであるTI を数段階に分けて設定し、transit time の影響を受けにくい最適な値を求めた。平成28年度は平成27年度に最適化したTIを適用し、頭頚部血管奇形患者のASLを実際に撮影した。収集されたデータを用いてラベル画像からコントロール画像を減算し、縦磁化の差(ΔM)を求めた。本施設のMRIでは撮像した病変の血流量を自動に計算する機能が備わっていないため、今後計算ソフトを用い、専門家の協力を得ながら本年度得られたΔMを用いて血流量を算出していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に最適化したASL法を用いて頭頚部血管奇形患者の撮影を実際に行うことができたが、撮像が可能であった症例数が予定よりも少なく十分な症例を集めることができなかった。その理由としては画像の解像度が予想よりも低かったため、病変の小さいものについては適応できなかったことなどがあげられる。今後可能な限り症例数を増やし、データ解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最適化したASL法を用いて、頭頚部血管奇形患者の撮影および収集されたデータの評価を行う。得られた ASL の定量値と血管奇形の 病態(high-flow または low-flow)との関連性を評価し、その鑑別法を探る。今後の課題については血流量がインラインで計算できないことがあるが、独自に計算ソフトを用い、専門家の協力を得て解決していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成の期間が延長したため論文発表費用が来年度に請求される予定となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度に請求される予定であった、掲載済みの論文の発表費用に使用する予定である。
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