頭頚部の血管奇形に対して適切な治療を行うには病変内部の血流速度 の評価が重要となり、臨床では造影 MRI などによる ダイナミックスタディが行われているが、いずれも造影剤を使用するため 腎臓への負担が大きい。当該研究で行う ASLは血液のプロトンを内因性のトレーサ ーとして利用し、造影剤を用いずに血流を測定することができる。高磁場装置(3T MRI)の普及や技術の向上によって画質が改善し臨床応用され始めているが、その多くは脳内病変に用いられており、頭頚部とくに血管奇形への応用はこれまで 報告が少ない。当該研究では ASL によって造影剤を使用しない低侵襲な検査を可能にし血管奇形の新しい病態評価方法を確立し治療法の選択に役立てていくことを目的とした。平成27年度は頭頸部領域のASLの撮像法の最適化を行った。ラベルされた血液が撮像領域に達する時間を考慮する必要があるため、目的の部位にあわせて 撮像パラメーターの1つであるTI を数段階に分けて設定し、transit time の影響を受けにくい最適な値を求めた。平成28年度は平成27年度に最適化したTIを適用し、患者のASLを実際に撮影した。収集されたデータを用いてラベル画像からコントロール画像を減算し、縦磁化の差(ΔM)を求めた。本施設のMRIでは撮像した病変の血流量を自動に計算する機能が備わっていないため、平成29年度は計算ソフトを用い、ΔMを用いて血流量の算出を試みたが、high-flow lesionとlow-flow lesionの鑑別に有用な値は出なかった。この理由として、病変の大きさが十分ではなくROIが正確に設定できなかったためと考えられる。また血流量を算出する際に熱平衡状態の縦磁化を求める必要があり、TIを4000に設定して暫定的に求めたが、IRの影響が残っているため正確な値ではなかった可能性がある。
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