研究課題
局所進行口腔癌の標準治療は手術療法であるが、高齢化に伴い手術困難症例が増加している。化学放射線療法による良好な治療成績が報告されつつあるが、口腔癌の大きな予後因子の一つである頸部リンパ節転移に対する治療効果は満足いくものではない。陽子線は、従来の放射線と比較して、その優れた線量分布から、周囲正常組織への障害を減じての高線量投与が可能であり、頸部リンパ節に対する高い治療効果も臨床的に明らかとなってきた。本研究は、頸部リンパ節転移を有する口腔癌に対する陽子線を用いた根治的化学放射線治療の治療効果・有害事象の検討及び分子生物学的効果についての解明を目的とする。決定時期の遅い追加採用であったため、今年度は来年度のための準備段階の期間とした。研究の第一段階として、対象の選定及び治療方法についての決定を行った。対象を初診時頸部リンパ節転移を伴う口腔癌新鮮例もしくは術後再発例とし、具体的な項目を検討して治療のプロトコールを作成し、研究の評価項目を決定した。関連の臨床研究として、今年度は、舌扁平上皮癌に対する治療成績の報告を論文として報告した。また、我々はさらに、上顎洞癌に対する研究及び再発口腔癌に対する研究も行い、動注併用陽子線治療の治療効果を検討した。これらの治療効果には頸部リンパ節を有する症例も多く、頸部リンパ節転移に対する陽子線治療の効果が示唆された。舌癌に対する論文はJournal of Cancer Research and Clinical Oncology (2016)に掲載された。論文の作成にあたって、英文校正と文献の購入を行った。上顎洞癌の論文はJapanese Journal of Clinical Oncology (2016)に掲載された。再発口腔癌の論文はHead & Neck (2016)に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
採用時期が遅れたことから、本年度は研究の準備段階とした。来年度からの治療に備えて、治療の適格基準及び検討項目の決定を行い、プロトコールを作成した。今後、症例を登録し、分子生物学的実験も含め研究を進めていく。
本年度末にエビデンスに基づいて陽子線治療についての適応が検討され、我々の執筆した論文に基づいて、口腔扁平上皮癌についても一応先進医療Aとして適応には残った。しかし、線量分割についてはある一定の取り決めがなされた。そのため、予定していた投与線量に若干の修正が必要である。今後も必要時には方向修正を行いながら研究を進めていく。
今年度は採用時期が遅かったため、迅速に研究を開始することが困難であった。
来年度は、研究に必要な機材や材料・本の購入を行う予定である。また、研究の成果を学会で報告し、論文作成を行うために研究費を使用する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Head Neck.
巻: 未定 ページ: 未定
10.1002/hed.24421.
Jpn J Clin Oncol.
巻: 46(1) ページ: 46-50
10.1093/jjco/hyv160
J Cancer Res Clin Oncol.
巻: 142(3) ページ: 659-667
10.1007/s00432-015-2069-0.