研究課題
本研究は、頸部リンパ節転移を有する口腔癌に対する陽子線を用いた根治的化学放射線治療の治療効果・有害事象の検討及び分子生物学的効果についての解明を目的としている。前年度決定した対象(初診時頸部リンパ節転移を伴う口腔癌新鮮例もしくは術後再発例)に対し症例登録・治療を開始したが、2016年に作成された陽子線統一プロトコールにより若干の方針修正を行う必要が生じた。具体的には組織ごとに適切な線量を採用することとした。原発巣の制御を最優先とし、併用療法としての化学療法は動注化学療法に統一した。また、動注化学療法の頸部リンパ節転移の制御に対する寄与についても検討項目とした。悪性腫瘍の治療効果は、治療後の一次効果のみではなく3~5年以上の長期での生存率のデータが治療効果を解析する上での重要な因子となる。当初の前向き研究と同時に追加研究として、南東北がん陽子線治療センターにおいてこれまで同様のプロトコールで治療を施行した症例を対象に、治療効果及び有害事象の検討を開始すべくデータ収集を行っており今後解析を進めていく。今年度は、頸部リンパ節転移を有する再発舌扁平上皮癌に対する解析を行い、治療成績及び有害事象について学会報告を行ったが、術後再発症例においては初回治療とほぼ同等の治療効果が示唆されている。関連の臨床研究として、口腔癌に対する動注化学療法を併用した陽子線治療での再照射についての治療効果を検討した。これらには頸部リンパ節を有する症例も多く、頸部リンパ節転移に対する陽子線治療の効果が示唆された[Asia Pac J Clin Oncol (2016)]。今後分子生物学的実験を進め、まずは採取した組織サンプルからDNA二重鎖切断頻度を計測・群間比較を行い検討を行うことを計画している。
3: やや遅れている
採用の時期が遅かったため初年度研究が進まなかったことと、プロトコールの変更による研究方向の修正によりまだ症例の蓄積が十分ではない。分子生物学的研究については、治療1か月後の組織サンプルの採取を予定した。しかし、部位や治療後の粘膜炎により組織サンプルの採取が困難である症例も多い。
本研究は扁平上皮癌を主体とする口腔癌の原発巣及び頸部リンパ節転移に対する治療に関するものである。2016年にこれまでのエビデンスに基づいて陽子線治療についての適応が検討され、線量分割について一定の取り決めがなされた。そのため、当初予定した治療線量からの若干の変更を要したが、研究の継続は可能であり今後も適宜進めていく。頸部リンパ節転移を伴う扁平上皮癌については、これまで同様のプロトコールで治療を行った症例が蓄積しており、これらについての後ろ向き解析も同時に行う方針とした。すでにデータの抽出を開始しており、今後解析を進めて行く。生検検体を用いた分子生物学的検討については、組織サンプルの採取を進めていく。
先述の通り、研究の進行がやや遅れていることにより研究や学会発表を含め当初予定していた予算が執行されなかった。
次年度は、現在の臨床研究に加え、基礎研究を進めるための必要な実験動物や各種試薬・機材の購入を行う。また、研究の成果を学会で報告し、論文を作成するために有効に研究費を使用する予定である。
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Asia Pac J Clin Oncol.
巻: 未定 ページ: 未定
10.1111/ajco.12502.