研究課題
局所進行口腔癌の標準治療は手術であるが、高齢化に伴い手術困難症例が増加している。また、臓器温存への期待から、動注化学療法を併用した放射線治療が行われ、治療成績も報告されつつある。しかし、頸部リンパ節転移に対する治療効果は満足いくものではない。陽子線は従来の放射線治療と比較して、その優れた線量分布から、正常組織への障害軽減と投与線量の増加が可能であり、頸部リンパ節に対する治療効果も期待される。本研究は頸部リンパ節転移を有する進行口腔癌に対する陽子線を用いた根治的化学放射線治療の治療効果と有害事象の検討及び分子生物学的効果についての解明を目的とした。2015年4月~2018年3月に南東北がん陽子線治療センターにて動注化学療法と陽子線治療を併用して治療を行った局所進行口腔癌例のうち、遠隔転移及び頭頸部に対する照射歴のない一次症例・術後再発例に対し根治目的で治療を行った72例を対象として登録し解析・検討した。原発巣の制御率は79%、頸部リンパ節転移の制御率は86%であった。治療の急性期有害事象としてGrade3の粘膜炎を55%で認めた。晩期有害事象としてはGrade2の骨髄炎を4例、嚥下障害を5例(Grade3以上が3例)認めた。今回の研究において、通常X線抵抗性とされる頸部リンパ節転移病変に対しても良好な治療効果が示唆された。しかし、晩期障害については、今後照射範囲を再検討し改善を検討すべきと考えられた。また、頸部リンパ節転移を有する再発舌扁平上皮癌に絞った検討では、再発症例においても、照射歴がなければ一次症例と変われない良好な成績が期待できることが示唆された。分子生物学的効果については、明らかな結果は得られなかったが、陽子線のX線に対する有効性が示唆されており、今後の課題としたい。
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Cancers
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10.3390/cancers10090333
日歯理工会誌
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