研究課題/領域番号 |
15K11087
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
尾曲 大輔 日本大学, 歯学部, 助教 (10608699)
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研究分担者 |
浅野 正岳 日本大学, 歯学部, 教授 (10231896)
勝呂 尚 日本大学, 歯学部, 助教 (90318452)
五條堀 孝廣 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (10755573)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 免疫 / 感染 / 炎症 |
研究実績の概要 |
IL-1αの創傷治癒の促進効果について、IL-1α KO mouseの背部に人為的に作成した創傷に電解酸性機能水(functional water: FW)または生理食塩水および3%H2O2を塗布した後、創傷の面積を経時的に計測したところ、wild typeマウスではFW作用群で作用後1日目で約20%の創傷治癒促進が見られたが、IL-1α KO mouseでは、創傷治癒促進効果は認められなかった。このことより、FWにより誘導されるIL-1αは創傷治癒促進の主体的分子であることが示唆された。さらにIL-1αの効果を検証するためにwild typeマウスの皮膚に同様の創傷を作成し、マウスリコンビナントIL-1αを作用させた実験では、予想に反して創傷治癒促進効果が全く見られなかった。 FWのどの成分がIL-1α産生に関与するのか、有効濃度、pH、酸化還元部位を段階的に変え、これらの3要素を様々に組み合わせたFWを100種類ほど作成し、IL-1α産生を指標にして検討を加えた。具体的には、HSC3細胞にこれらのFWを30秒作用させ、ELISAによりIL-1α濃度を測定した。その結果、有効塩素濃度は20~50ppmの範囲、pHはより酸性領域で、また酸化還元電位は2,000mV程度の組み合わせで最も効率的なIL-1α産生を認めた。この3要素はすべてが上記要件を満たす必要があり、FWの作用は極めて微妙にコントロールされているものであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の基礎的な研究によりFWの有効な成分を特定して、IL-1αの効率的な産生を認めたことを実験的に確認した。また創傷治癒促進についてIL-1α KO mouseでは、創傷治癒促進効果はみられず、FWにより誘導されるIL-1αは創傷治癒促進の主体的分子であることがわかり、おおむね実験計画通りであるため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の基礎的な研究によりFWにより誘導されるIL-1αは創傷治癒促進の主体的分子であることがわかった。FWによるIL-1α産生誘導の細胞内でのシグナル伝達経路に関する研究は重要であり、追及していく予定である。また、FWが転写因子 NF-κBの活性を抑制することはすでに報告しており、これ以外の転写因子の関与についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体や試薬などを購入する際に端数が生じたため、47円を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画では、IL-1αの細胞内でのシグナル伝達経路の解析やNF-κB以外の転写因子の関与について検討する予定である。これらの研究に必要な消耗品,研究成果発表のための学会参加旅費,論文校正料,掲載料として使用する。27年度研究費の未使用分である47円は消耗品費の余剰分であるが、上記の用途に充てる予定である。
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