研究課題/領域番号 |
15K11092
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
田口 明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70243582)
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研究分担者 |
吉成 伸夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20231699)
東 幸仁 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40346490)
浅野 晃 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60243987)
三木 学 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (80549410) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 歯科 / パノラマエックス線写真 / 骨折 / 血管内皮機能 / 総頸動脈石灰化 |
研究実績の概要 |
パノラマエックス線写真による骨粗鬆症スクリーニング指標としての総頸動脈石灰化所見の有用性について1021名の歯科受診患者について検証した。その結果、総頸動脈石灰化のある歯科患者においては骨粗鬆症であるリスクは有意に高いことが示された。一方で将来の骨折発生リスクとの明確な関連は得られなかった。これは日本人において椎体骨折が多いにも関わらず、椎体骨折を有する患者の三分の二は症状を有さないために、骨折判定を受けていないことに起因するものと考えられた。このために無症状椎体骨折を評価するために、自己申告の腰の曲がりおよび身長低下が椎体骨折の有用な指標となりうるのかについて、約400名の男女において検証を行った。その結果、自己申告であるにも関わらず、腰の曲がりや身長低下の所見が椎体骨折の数および程度と有意に関連していることが判った。次年度はこの指標を追加して、パノラマエックス線写真による骨粗鬆症スクリーニング指標が椎体骨折リスクの有用な指標であるか否かについて検証を行う予定である。 研究分担者の循環器専門医は、10年間骨折リスク評価指標のFRAXと血管内皮機能との関連について検討を行った。その結果、414名の男女において、今後10年間の骨折リスクは血管構造の劣化および血管内皮機能障害と明確に関連していることを見つけ出した。我々のこれまでの知見からは、パノラマエックス線写真による骨粗鬆症スクリーニング指標は血管内皮機能障害と関連を有することはすでに判っていることから、次年度はFRAXによる10年間骨折リスクとパノラマエックス線写真による骨粗鬆症スクリーニング指標との関連について検証する予定である。また歯槽骨吸収度が無症状の糖尿病患者をスクリーニングする有用な指標であることも約300名の歯科受診患者で明らかとなった。糖尿病は骨粗鬆症のリスク因子であり、今後この指標もスクリーニング指標に連結する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた総頸動脈石灰化所見と骨粗鬆症との関係、歯槽骨吸収度と骨粗鬆症との関係および血管内皮機能と骨折リスクとの関連は証明された。視覚的な顎骨海綿骨の骨梁構造と骨粗鬆症との関連は見いだせなかったが、パノラマエックス線写真による骨粗鬆症スクリーニング指標と連結すべき自己申告の腰の曲がり指標という新しい骨粗鬆症スクリーニング指標を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの知見は当初予定通りであるが、顎骨海綿骨の骨梁構造の画像解析による新しい指標の発見は中途である。次年度はこれを完成させて(現在完成途上)、これまでに得られた知見を予定通りにパノラマエックス線写真による骨粗鬆症スクリーニング指標と統合して、最終的な骨粗鬆症スクリーニング能力の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に国際学会と国内学会での最終発表および香港大学での研究位置合わせを追加予定したために次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
4月および11月の香港大学歯学部での研究打ち合わせ、7月の台湾の国際学会(第31回東南アジア国際歯科研究学会)での発表、そして10月の国内学会(第19回日本骨粗鬆症学会)での発表の旅費として使用する。
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