歯の人工修復材料として、金属やレジン、セラミックスなどが用いられている。これらの人工修復材料の中でも金属は突出して利用されており、患者のQOLの向上に役立ってきた。しかし、一部の患者においては、金属アレルギーなどの炎症が引き起こされることが報告されており、金属による炎症性免疫反応が問題となっている。これまでの研究から、金属アレルギーは金属イオンが生体内タンパクと結合することにより抗原となっておこるIV型アレルギーとして位置づけられているものの、その分子機構はわかっていない。金属はそのままでは抗原とはならないため、疾患を引き起こさない。金属は溶出してイオンとなり、その金属イオンが生体内タンパク質と結合することハプテンとして機能するため抗原となり、悪さをするT細胞がこの抗原を認識して疾患を引き起こすと考えられている。したがって本研究は、金属アレルギーの原因となる悪さをするT細胞を特定することを目的とした。 本年度は、昨年度までに金属反応性TCRとして考えられた、TCRβ鎖の遺伝子クローニングができるようになった。特に、TCR鎖の中で変異に富み、クローニングが難しかったCDR3領域も正確にクローニングできるようになり、TCR遺伝子を特定できた。 また、野生型マウスを用いた時は、金属アレルギーを誘導しても、金属特異的TCRのα鎖、β鎖を解析し決定するのは容易ではなかったが、TCRα鎖の遺伝子導入マウスを用いることで、TCRβ鎖の解析が容易になった。その結果、パラジウムアレルギーにおいて、ある特定のTCRβ鎖が反応していることが明らかになった。
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