根尖性歯周炎に対するカテプシンK阻害剤の骨吸収抑制作用および抗炎症作用のもたらす効果についてこれまで研究を行ってきたが、使用していたカテプシンK阻害剤の臨床応用が困難となったため、本年度は代替の骨吸収抑制剤として、抗RANKL抗体を用いて実験を行った。骨粗鬆症や骨転移癌の治療薬である骨吸収抑制剤デノスマブは、破骨細胞分化誘導因子であるRANKLを標的とした抗ヒトRANKL抗体製剤であり、RANKLに結合して破骨細胞活性を抑制するが、その作用は可逆的であり副作用が少ないとされていることから、炎症による歯槽骨吸収の抑制に効果が期待できる。 抗RANKL抗体であるデノスマブおよびBP製剤であるゾメタを使用し、それぞれの薬剤がC57BL/6マウスに全身的に効果があることを確認するため、まず大腿骨の解析を行った。デノスマブとゾメタを6週齢のC57BL/6マウスの腹腔内にそれぞれ投与し、21日目に屠殺、μCTで解析したところ、濃度に依存して骨の増加傾向が認められた。また、同マウスの下顎第一臼歯の咬合面をラウンドバーを用いて露髄させ、根尖病変の大きさをμCTで解析したところ、すべてのマウスで根尖病変の大きさは薬剤の濃度に依存し小さくなることが確認された。 今後は免疫組織化学的手法による作用機序の解析や、薬剤の局所投与方法の検討等を行っていく予定である。
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