本研究は、根面う蝕の進行を抑制する治療法を開発することを目的とし、in vitroの系での根面う蝕誘発モデルの作製・構築と、菌種や培養条件によるう蝕病変進行や細菌動態の相違について検討した。 昨年度、根面う蝕の原因菌の初期接着について、ポリ-D-リジン(PDL)と比較してフィブロネクチンにてコートされた面の方に、菌の強い接着および増殖を認められたため、本年度は接着因子としてフィブロネクチンを採用し、Actinomyces naeslundii ATCC 12104、A. viscosus ATCC 15987、A. israelii ATCC 12102の3種の菌の付着能および酸産生能の検討を行った。菌の付着能はA. naeslundiiが一番高く、A. viscosus、A. israeliiの順であった。酸産生能に関しては、培養液とバイオフィルムについてpHの検討を行った。A. naeslundii やA. viscosusは培養液pHが低下してもバイオフィルム自体のpH低下は抑制されていたが、A. israeliiの酸産生能は強くバイオフィルムのpHも低下していた。 一方、根面う蝕誘発モデルでは、歯面のA. naeslundiiのバイオフィルムのpHが培養液と比べて低いことが明らかとなった。以前のデータでA. naeslundiiの象牙細管内への侵入が顕著だったことと合わせると、歯質に侵入したA. naeslundiiはう蝕病変ではコントロールしにくい存在となり、病原性を発揮する可能性が推察された。 以上、根面う蝕に強く関わっているとされる菌種とう蝕進行メカニズムとの関連性について明らかとなった。
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