研究課題/領域番号 |
15K11118
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 妃可 九州大学, 大学病院, 助教 (40467915)
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研究分担者 |
吉嶺 嘉人 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80183705)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レーザー / 組織再生 / 根尖病巣 / 培養細胞 / LLLT / 根管洗浄 / 根管殺菌 |
研究実績の概要 |
レーザーの作用は単に殺菌・清掃効果だけでなく、周囲細胞を活性化して組織再生を促進する効果を持つことが指摘されている。本研究では、レーザーの持つ殺菌・洗浄効果に加えて、培養細胞に対するレーザーの生物学的活性作用を明らかにし、更に実験動物を用いて生体内での根尖周囲の骨欠損部の治癒促進効果を解明することで、最終的には臨床における根尖周囲組織再生のためのレーザー応用法の確立を目的としている。 まず、根管からデブリとスミヤー層を除去するための3種類の洗浄法(レーザー活性化洗浄, 超音波洗浄, 通常のシリンジ洗浄)の効果を比較した。ウシの歯根象牙質を用いた。洗浄液として次亜塩素酸ナトリウムとEDTAをこの順序で使用した。走査電子顕微鏡観察ではレーザー活性化洗浄法と超音波洗浄法は効果的なスミヤー層除去と開口した象牙細管を示した。シリンジ洗浄法の試料ではスミヤープラグとデブリが残存していた。結論として、レーザーや超音波を用いた洗浄液の活性化は根管壁の清掃性に寄与する可能性があることが分かった。次に、根管模型におけるEr:YAGレーザー洗浄時の流体を可視化した。透明根管模型においてPIV法を用いた高速度撮影後に流体解析ソフトで解析を行った。2種類のサイズの根管内で、2種類の太さのレーザーチップを用い、チップは根管底部から18 mmの位置に設置した。根管内で活発な流れが起こる領域の割合は、グループ毎に異なった。結論として、Er:YAGレーザーは根管サイズとチップの直径に応じて異なる流れを生み出す可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞としてマウス頭蓋骨を用いた培養系で、レーザーの持つLLLT効果を解析できることを確認した。さらに、根尖歯周組織の再生の前段階として、レーザーの持つ根管内の清掃効果に着目して、液体内でのレーザー照射時の流体観察と根管清掃効果を対象とした実験を実施した。その結果、レーザーや超音波を用いた洗浄液の活性化は根管壁の清掃性に寄与する可能性があること、及び、根管サイズとチップの直径に応じて異なる流れを生み出す可能性が明らかとなった。この成果を学会発表し、日本レーザー歯学会誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Er:YAGレーザーの有する生物学的作用に関して、培養細胞を対象とした細胞レベルでの影響ならびに実験動物(ラット)に対する影響を評価する予定である。培養細胞を対象とした研究では、線維芽細胞と骨芽細胞を用いて、レーザーによる影響を細胞増殖能・代謝活性の面から分析する。次に、実験動物を対象とした研究では、顎骨に骨欠損または根尖病巣を形成したラットを対象に、マイクロCTで骨の状態を経日的に観察して至適照射条件を探索し、レーザー照射の影響を形態学的に評価する。以上のデータを解析することで、Er:YAGレーザーの組織再生促進作用とそのメカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、本研究課題のテーマであるレーザーの持つLLLT作用の解明のために培養細胞(MC3T3-E1)を用いた方法の有効性を確認した。しかしながら、研究の主体はLLLT作用の前段階としての液体内でのレーザー照射時の流体観察と根管清掃効果を対象としたものであった。このため、当初予定していた抗体等の薬品を平成27年度は購入しなかった点が、次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度以降は、培養細胞及び実験動物を用いた生物学的解析を開始する予定であり計画通りの予算執行になると考えている。
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