レーザーは殺菌・蒸散だけでなく、周囲に存在する細胞を活性化して組織再生を促進する効果を持つことが数多く報告されている。本研究では、培養細胞および実験動物に対するレーザーの生物学的活性化作用(LLLT効果)を明らかにすることで、生体内での根尖周囲 の骨欠損部の治癒促進効果を解明し、最終的には臨床における根尖周囲組織再生のためのレーザー応用の確立を当初の目的とした。根尖周囲組織においてLLLT効果を発揮するには、病変部の除去とともに根管系を無菌化することが重要であると考え、レーザーの根管洗浄作用に関する各種の実験を試みた。根管からデブリとスミヤー層を除去するための3種類の洗浄法の効果を比較するためにウシの歯根象牙質を用いた。根管壁をカーバイドバーで切削してスミヤー層を形成した後、試料を模擬根管模型の根尖部に装着した。洗浄液として次亜塩素酸ナトリウムとEDTAをこの順序で使用した。走査電子顕微鏡観察ではレーザー活性化洗浄法と超音波洗浄法は効果的なスミヤー層除去と開口した象牙細管を示した。逆に、シリンジ洗浄法の試料ではデブリが残存していた。次に、根管模型におけるEr:YAGレーザー洗浄時の流体を可視化した。透明根管模型においてPIV法を用いた高速度撮影後に流体解析ソフトで解析を行った。2種類のサイズの根管内で2種類の太さのレーザーチップを用いてレーザーを照射した結果、大きく拡大された根管で細いチップを使った場合、洗浄効果は減少する可能性があることが分かった。結論として、Er:YAGレーザーは根管系の洗浄に極めて有効であることが明らかとなった。今後さらに、レーザーの有するLLLT効果の解明を目標に研究を進める予定である。
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