健常者と脳梗塞、脳梗塞の原因となる動脈硬化症の既往のある根尖性歯周炎の治療を行っている者を対象として、細菌と疾患との直接的な関わりを明らかにするために、全身疾患の既往のある者の血清中の抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体・抗Apolipoprotein H抗体)、細菌に対する抗体およびApolipoprotein H 上のペプチドTLRVYK に対する抗体価を測定した。この結果、有病者血清中のApoH上のペプチドTLRVYKの抗体価について健常者を対象として比較したところ、有病者において有意に高い値を示した。しかし抗リン脂質抗体に有意差は認めなかった。TLRVYK抗体価は唾液中のA. actinomycetemcomitansと関連が認められたが、血清IgGとの関連は認められなかった。次に根尖性歯周炎におけるTLRVYK抗体価を測定したところ、抜髄根管に比べ上昇していた。また、メタゲノム解析の結果、根尖性歯周炎においてさまざまな菌種が認められ、難治性となる場合には多数の細菌叢が関与する可能性が示された。さらに日和見感染や薬剤耐性能を有した細菌種を含んでいることから、菌血症といった全身に影響する可能性が示された。以上の結果から、血清あるいは根管内容物を検体としたTLRVYK抗体価の測定は、細菌感染による全身的な免疫応答を知るために有益な指標となる可能性が示唆された。
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