研究実績の概要 |
象牙質再石灰化能と接着能及び長期耐久性を兼ね備えたバイオアクティブ修復材の開発を行うことを目的として研究を行った.昨年度,調整を行った,4-MET-Ca, MDP-Caを配合したボンディング材を用いて,微小引っ張り試験を,24時間後,3ヶ月の試料について測定を行った.その結果,3ヶ月の試料において,コントロール,4-MET-Caと比較して,MDP-Caを配合した試料が有意に高い値を示した.このことから,MDP-Caを配合することにより,新規接着性モノマーが,長期耐久性に影響を与えることが示唆された. また,試作ボンディング材の硬化体を作製後.1週間水中保管し溶出液を作製した.この溶出液中に脱灰象牙質を2ヶ月間,及び1年間保管し.TEM観察にて,コラーゲンに対する影響を評価した. 保管2ヶ月経過後の試料においては,溶出液保管後の試料では,コラーゲンの横紋構造が残存していたが,水中保管の試料においては,横紋構造の消失が認められた.また,1年経過後の試料においても,同様な像が観察された.これらの結果は,ボンディング材からの溶出イオンが,象牙質コラーゲンの加水分解に対して,何らかの影響を与えていることを示した.コントロールと比較して.コラーゲンの加水分解を抑制する像が観察されたことから.新規接着性モノマーが.有機質に対して影響を与える事が示唆された. コラーゲンに対する影響を調べるために,象牙質粉砕試料を用いてヒドロキシプロリン量計測を行った.その結果,試料保管1年後の試料において,ヒドロキシプロリンの溶出量は,水中保管が,ボンディング材溶出液浸漬試料よりも有意に高い値を示した. これらの結果から,ボンディング材溶出液に浸漬したことで,脱灰コラーゲン表面に各種イオンが沈着し,酸処理に対する耐酸性を発揮してコラーゲンが分解されなかったことが示唆された.
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