研究実績の概要 |
象牙質再石灰化能と接着能及び長期耐久性を兼ね備えたバイオアクティブ修復材の開発を行うことを目的として研究を行った.一昨年度,調整を行った,4-MET-Ca, MDP-Caを配合したボンディング材を用いて,微小引っ張り試験を,6ヶ月,1年間水中保管した試料について測定を行った.その結果,すべて期間の試料において,コントロール,4-MET-Caと比較して,MDP-Caを配合した試料が有意に高い値を示した.このことから,MDP-Caを配合することにより,新規接着性モノマーが,長期耐久性に影響を与えることが示唆された. また,象牙質接着界面における形態変化に対する評価を行った.健全象牙質面に上記のボンディング材処理した試料を作製した. 試料は, 37℃,人工唾液中に浸漬前(0日),浸漬24時間,1週間,1か月間保管した.切断面にイオンエッチング処理SEMを用いて接着界面の観察を行なった. その結果,MDP-Ca配合ボンディング材では,人工唾液浸漬前では,ボンディング層全域に多孔性の構造物が確認された.人工唾液浸漬24時間後にイオンエッチングに耐性を認める部分がSEMにて確認された,浸漬1週間後および1か月後には全域においてイオンエッチングに耐性を認めた.コントロールにおいては,全期間において,イオンエッチングに対して,耐性を認めなかった.一方,ボンディング材の吸水率および溶解率の測定を行った.その結果,MDP-Caを配合することにより,吸水率および溶解率が低下することがわかった. これらの結果から,ボンディング材にMDP-Caを添加したことで,象牙質に対する長期接着耐久性が向上し,イオンエッチングに対しても耐性を認めたことから,ボンディング材の機械的物性に対して影響を与えることが示唆された.
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