研究課題
超高齢社会が進展することで、う蝕(根面う蝕、二次う蝕)や歯周炎に罹患した現在歯数はさらに増加することが予想され、それらを改善することによる口腔細菌由来の基礎疾患の予防も重要である。そのため、デンタルプラークを減少させることが求められる.これまでにホップが歯周病原細菌P. gingivalisに対してどのように作用するかについて報告がない。本年度は、前年度までのホップのS. mutans効果に加え、ホップの抗菌成分キサントフモールのP. gingivalisに対する影響について最小発育阻止濃度の測定およびRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行った。24時間後の最小発育阻止濃度は、2.0ug/mlであった。トランスクリプトーム解析で発現が低下していたものに、Fe-S cluster assembly protein SufB、Fe-S cluster assembly protein SufDおよびFe-S cluster assembly ATPase SufCが認められた。これらの遺伝子産物は、鉄の取り込みや鉄-硫黄クラスターの形成において重要な役割を果たしていると考えられることから、キサントフモールは、P. gingivalisの発育に必要な鉄の取り込みを阻害する効果を有する可能性が示唆された。以上のことからホップはう蝕予防効果だけでなく歯周病予防効果も持った特徴のある総合的な口腔ケア素材として、食品や口腔ケア用品への応用が期待できる。